ファンまじ☆ 〜マリーと夢見る王子様〜
三屋城衣智子
第一話 突然の転移
ワシ、悲しいんじゃ……
夢の中、誰かがなげいている声が少女の耳に聞こえてきた。
(誰?)
「ワシワシ、ワシじゃ」
ど定番のオレオレ
「突然じゃけどお前さんには異世界へ行ってもらいたくてな、ええかのぅ?」
その人物は突然、
「は?」
「うんうん『はい』って言いたいんじゃのー、わかるわかる」
ちょーわかる、と言いながらもそのおじいさんは上も下もない真っ白な夢の世界の中で、地面方向の白い面に手にしたステッキのようなものを使い、スラスラスラーっと、何事か記号や文字のような物をびっしりと描いている。
少女には読めず、漫画とかファンタジーでいうところの
「何してるの」
「ん? いやこういうのって
言い終わりと同時に描き終わったらしく、外側の円の線は綺麗に閉じられた。それと同時に少女の体は宙を浮く。
「ちょ、やっ、おろして!!」
白い世界なので、浮いたというのも絵面ではわからないだろうが、少女は目を白黒させつつも怒り
少女はそのまま宙を移動し魔法陣の中央に下ろされ、おじいさんが手持ちの棒で陣をついた。
光る魔法陣、飲み込まれる少女。
かくして彼女は強制的に送り込まれてしまったのだった。
異世界、というものに。
※
異なる世界。
そこは単純に『少女がいたところでは無いところ』である。
彼女、こと
学校のオリエンテーリングが今日で終わり、いよいよ本格的な中学校生活が明日から始まるはずで。勉強ついていけるかなとか、友達できるかなーとか、もしかしたら初めての恋しちゃうかも?! などとその生活にとても期待をしていて。けれど
『ほんと、すまん。けどワシどうしても異世界に魔法少女を広めたくてのぅ』
「そんなことより家に帰してっ! 明日はめく学の発売日だったのに!!」
そして明日は、彼女がとても楽しみにしていた漫画家
(そもそもあんた誰)
万里はこの状況を飲み込めないでいた。
頭には謎の言葉が響きけれどその姿は見えず、寝ていたはずの体はひんやりとした外気をまとっている。
『ワシ? ワシ、神様。
「かるっ」
『突然じゃけど、ワシが気になっとる異世界が一つあってのぅ。改革するのに魔法少女の力を
「『よろ』って気に入ってるでしょ……。気安く言えばホイホイ引き受けてもらえると思わないでよね! てかなんで私の頭の中に話しかけられるわけ? キモい」
『ひどい……ワシ、
「繊細な人は自分で繊細って言わないのよクソジジイ」
「誰か、いるのか!」
ぎゃひっ! という色気も何もない悲鳴は口の中に飲み込まれた。頭の中で応答していたはずだが、どうやら万里は自分の口にも出していたようだ。
声のした方をこっそり
(どうしよう。どうするのが正解?)
取るべき行動に迷っていると、後からトン、と人の手のようなものが万里の背中を押した。よろけた彼女は物の見事に茂みに突っ込み飛びころげ出てしまう。
『応援ぢゃ!』
(そんなのいらない!)
心の叫びもむなしく、彼女は騎士のような人の目の前だ。
(どうしよう?!)
「いたな不届き者! ここを王城と知っての
騎士は剣を腰の
(切られて死んでしまう!!)
地面に這いつくばった形の彼女が、なんともしようがないと思って目をつぶった瞬間、どこからか別の声が響いた。
「待ちなさい!」
その声にうっすらと目を開けると、万里の右斜め前に、いわゆる王子様のような格好をした男子がいた。左腕を剣の前に出している。どうやら騎士の動きを止めてくれたようだ。
「あ……」
「やっぱりいましたね。間に合ってよかった」
「マルク殿下! 危のうございます!!」
「いい。どうやら迷い込んだようだ、私が引き取る。ご苦労だった、かわらず見回りをしてくれ」
「はっ!」
指示を出され、騎士は目上の命令だったからか素直に一礼するとその場を去っていく。万里がホッとしていると、マルク殿下とやらに声をかけられた。
「……君、変わった服を着ているね。それに泥だらけだ。こっちにおいで」
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