14.SPおいしいです
あれから更にもう一頭のファングボアを仕留め、帰りがけにホーンラビットを倒した俺たちは、村の狩人のもとに来ていた。
女狩人のヒルダ、村唯一の
何故かディアマンドもいた。
恐らくディアーネが心配で帰りを待っていたのだろう。
「おや、ふたりとも戻ったようだけど……」
「無手か。魔物とは遭遇できなかったのか?」
ヒルダとディアマンドが目を細める中、ディアーネが胸を張って「ふふーん、三回も遭遇してちゃんと倒したよ!」と自慢げに告げた。
「ほらレイシア、見せてあげてよ。私たちの戦果を」
「はいはい。ここに出すよ」
「「???」」
ヒルダとディアマンドが見守る中、俺はアイテム袋からファングボアを二頭とホーンラビットを一羽、取り出した。
「な、今どこから!?」
「どういうことだ、レイシア?」
驚くヒルダと不可解だと言わんばかりのディアマンド。
まあ初めて見ればそういう反応になる。
何故かディアーネが自慢げに「妖精さんから授かったレイシアの魔法だよ。凄いでしょ!」と解説した。
「聞いていないぞ……これ、仕留めたてじゃないのか? まだ温かいぞ」
ディアマンドがファングボアに身体に手を当てた。
「解体はヒルダさんに教えてもらいながら森の外でまとめてやろうかと思いまして。というわけでファングボアの片方とホーンラビットはひとまず仕舞いますね」
俺は最初に仕留めたファングボアを残して、再び獲物をアイテム袋に入れた。
「とんでもない魔法だ。それ、迂闊に見せて大丈夫なのか?」
「でもこれがあるとないとじゃ、効率が段違いですから」
ディアマンドの心配もその通りなのだが、俺は効率を取ることにした。
どうせ大物を倒したところで、持ち帰る手段はアイテム袋くらいしかないのだ。
使わないのはもったいない。
「あはははは。いいねえ。確かにこの子らは農家の嫁にはもったいないよ」
ヒルダはさっとファングボアの傷を検分して、言った。
解体作業と血抜きの仕方を教わり、すべて終わった頃には日が暮れかけていた。
ファングボアの肉にはかなり良い値段がついた。
ホーンラビットの方はまあまあと言ったところ。
雑魚中の雑魚のホーンラビットとそれなりに危険なファングボアでは価値が違う。
肉は農村に配られ、毛皮はヒルダが鞣してくれるらしい。
「今度、行商人が来たら牙と角と合わせて売り払おう」
さて幾らになることやら、今から楽しみだ。
ファングボアを狩れたということで、ディアマンドの心配も払拭できたらしい。
魔法がなければもっと苦戦するというのだから、当然だろう。
ちなみにSPはブルーベアには程遠いが、ここ三年の農作業や訓練では得られない程度には稼げた。
どうやらディアーネがトドメを刺してもSPはきちんと分配されるらしい。
このペースで狩りを続ければ、上級クラスの証もそう遠くはないだろう。
ディアーネ自身の成長がどうなるかは未知数だが、SPが貯まればそのうちディアーネも上級クラスにクラスチェンジするかもしれない。
二年でどこまで伸びるか、楽しみだ。
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