5.メニュー画面解禁!!
ポゥ、とフェアリーサークルがほのかに光を放った。
溢れた光のひとつが、空中に浮かび上がり、やがて手の平サイズの妖精の形となる。
「可愛らしいお客さんね。何か用かしら?」
成功した。
妖精を呼び出したのだ。
『トゥエルブ』の冒頭でアイテム袋を渡される以外では、フェアリーサークルでは妖精を呼び出すことでHPやMPの回復を行うことができる。
まあ今はそんな効果より、アイテム袋が欲しいのだけど。
「初めまして妖精さん。アイテム袋をください」
「ふ~ん? アイテム袋ねえ……」
くるくると俺の周りを飛び回る妖精。
ふと地面に倒れ伏すホーンラビットに気づき、目を丸くした。
「あれ、ホーンラビットじゃない。あなたが仕留めたの?」
「はい。〈投石〉で」
「へえ~! 凄いじゃん。……うーんそうだな、将来大物になりそうだし、いいよ、アイテム袋、あげる」
「本当!? ありがとう!!」
「その代わり、名前を教えてよ」
「レイシア」
俺は何の警戒心もなく妖精に名を名乗った。
妖精は口の中で俺の名前を幾度か転がすと、「うん、覚えた」と告げる。
「レイシア、あなたは妖精の友として、これから先も助けてあげる。フェアリーサークルのあるところで私を呼べば、怪我を治したり、魔力を回復してあげる」
「じゃあ、あなたの名前も教えて」
「名前? 無いわ。レイシアがつけてよ」
妖精に個体名はないらしい。
しばらく俺は頭を捻って、「フェイ」と名付けることにした。
犬に「ドッグ」と名付けるようなものだが……。
「フェイね。いいわ、私は今日からフェイ!!」
名前をもらって嬉しそうにクルクルと飛び回るフェイ。
俺は居ても立ってもいられずに催促する。
「ねえフェイ、アイテム袋を早く頂戴」
「いいよレイシア。……~~えい!!」
……?
「これでアイテム袋が使えるようになったから。使い方は、なんとなく分かるでしょ?」
言われてみると、確かになんとなく分かる。
てっきりアイテム袋というくらいだから、袋を渡されるのかと思ったけど、どうやら袋を実際に携帯する必要はないらしい。
確かにゲーム中でもアイテム袋なるものを介してアイテムを出し入れしている描写はなかった。
俺はさっそく、アイテム袋を開いてみた。
仮想ウィンドウが開き、空っぽのアイテム袋が表示された。
表示されたウィンドウをキャンセルすると?
……やった、メニュー画面だ!!
見覚えのある『トゥエルブ』のメニュー画面が表示された。
なぜかすべて日本語で表示されているが、どうも母国語で表示される仕様らしい。
すぐさまステータスを確認する。
クラスチェンジはステータスのクラス欄から行うことができる。
当然、今は何のクラスにも就いていないはずだった。
しかし、実際には
どうやら俺は農民に生まれたらしい。
いや実際、農民の子だから当然と言えば当然なのか?
そしてクラス以外にも驚くべきことに、〈投石〉スキル以外にセットされているスキルがあったのだ。
どうやら父の手伝いをしたときに勝手にSPを消費してスキルを習得してセットしたらしい。
ふと顔をあげると、フェイは興味深い眼差しで俺を見ていた。
「これからは、ソレを使ってスキルを習得したり、セットしたりしないと駄目だからね。まあレイシアは分かってるみたいだけど」
フェイは「じゃあまたね!」と言って、光の粒になって消えた。
◆
《名前 レイシア 年齢 5 性別 女
クラス
パッシブスキル
〈農業Ⅰ〉
アクションスキル
〈投石〉
控えスキル
〈農民の証〉
》
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