クラフターお嬢様と遭遇する

 まだグローバルオープンを始まっていないのに人が溢れていてちひろとはぐれてしまいそうです。この圧迫感は通勤ラッシュの無人電車の中を連想させるくらい苦痛で人の流れで遅くてイライラしてきます。




「ほらちゃんと手を握らないとはぐれちゃうよ? ヘッドスタートでこんなに人が多いとは想定外ね」


「あ、ありがとうございます。でもこれだけ人が多いなら新しい出会いがありそうでとても楽しみです」


「あんたはそうやって誰とも仲良くできそうでいいわね。ほらもう少しでつくから手を強く握りなさい」




 エピソードの中央にある大きな塔の最上階。ここにある賢者の古書を手に入れると隠し魔法が使えるみたいなのでメイジのちひろを成長させる目的で来ました! 早速探してみようと思いましたが辺りは人人人しかいません。やはり攻略掲示板ということで情報が公開されたせいで皆さん来ますよね。これじゃまるでバーゲンセールの会場みたいです......。それにしてもさっきから通りかかるプレイヤーさんたちがこちらをちらちらと見てもやもやした気持ちになって落ち着きません。一体何がそんなに気になるのでしょうか。




「ちょっとそこのあなた質問ですわ。その装備はどこで手に入れましたの? もしよろしければ教えてくださいまし」


「これは私のハンドメイドです」


「その装備をクラフトできますの? あなたもしかしてクラフターですわね? どこで作れるようになりましたの? レシピはどこで手に入れましたの?」


「そんなにうちのパーティーメンバーに近づくのはやめてくれないかしら? いきなり話しかけてきて詰めよってくるって印象悪すぎるわ」


「おっほん! これは失礼しましたわ。今日はこの辺にしといてあげますわああああ」




 すごくお嬢様ポイ口調でクルクル巻きのロングヘアー、もしかしてリアルお嬢様だったりとか考えているとほっぺをつねってきました。




「痛いです。どうしました?」


「何ニヤニヤしてるのよ。そんなにあの人のこと気になるのかしら」


「気になってたわけじゃないよ。ただお嬢様ぽくてロールプレイなのか現実でもそうなのかって考えてたらワクワクしてただけだよ」


「それは気になってるって言うのよ? あまり嫉妬させると炎で燃えつくすわよ?」




 ギラギラに輝いている瞳に手からファイアーを出すちひろは怖いですね。嫉妬とか言ってましたがどこに嫉妬する要素があったのでしょうか。私気になります! とかいうとまた怒られそうなので胸の内にしまっておくことにしましょう。


 

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