∞47【戦闘行動と、スキル《弾幕》について】

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 アゾロの能力《弾幕バレージ》については、アゾロ本人にも分からない謎が多い。


 そもそも、アゾロが属する『この世界』には、『銃とか大砲とか』なんて、どちらもない。だから“弾幕を張る”という戦術概念がないし、なぜ自分に《弾幕》という能力が備わっているのかもアゾロには分からない。


 アゾロにとって重要なのは、《弾幕》という能力に対する自分の考察ではなく、その機能の方だ。



 《弾幕バレージ》を展開すると、アゾロの主観的には『身の回りの空気を“形あるもの”として捉える』ことができる。

 そして、『ひとかたまりにした空気を振動させる』ことができる。


 アゾロのスキル《弾幕バレージ》は、アゾロ自身の思念イメージ次第で、攻撃にも防御にも移動にも自在に振り分けることができる。指先で大きな樹の幹を軽く叩いた衝撃を樹全体に伝播させて“枯れ葉だけを落とす”だとか、足元の空気を振動で固めて空中を“多段ジャンプ”するだとか。


 ただし、現在のアゾロの能力制御技術では、攻撃、防御、移動に同時に《弾幕》を付与することはできない。いろんな動きを同時に行うと、どうしても能力制御が粗くなり、行動そのもののバランスが崩れる。



 アゾロの能力は、大きな磐の表面全体に“踏み付けストンピングの振動”を伝播させて、大磐全体を少しずつ地面に沈めることができる。

 大磐を覆う『空気そのもの』を振動させて、大磐の表面全体を『巨大な振動ドリル』に変化させる訳だ。


 その一方で、能力を繊細にコントロールしないと、『空気側からの反作用』によってアゾロ本人が弾き飛ばされかねない。


 例えば、“空気の塊を蹴って多段ジャンプ中”に《弾幕》で強化した“回し蹴り”を放とうとすると、攻撃の反作用で体が空中でひっくり返りかねないので、すごく危ない。


 アゾロの能力は、『空気』という身の回りにありふれた物質を介することで、威力や効果範囲に大きなアドバンテージを持つ。その反面、『自分の周囲の空気』という“目に見えないもの”が能力作用の対象になるので、自分や周囲の安全を守る為には、何よりもアゾロ自身の繊細な能力制御技術が必要となるのだ。



「……大切なのは“バランス”、か」


 丘の上の大きな樹の幹にもたれかかってそうつぶやきながら、アゾロはメニュー画面を開いた。メニュー画面上の通常コマンドの一つ、チュートリアル機能を使って、自分の動きを『客観視』する為だ。そのことを、アゾロ自身は《無限チュートリアル特訓》と名付けて読んでいる。


 この、自分の心の中で『自分自身を含めて、周囲の状況を客観視出来る』というもう一つの能力のお陰で、巨大な破壊の力を内に秘めつつもアゾロは自分自身の心のバランスを保っていられる。



 アゾロの能力は、アゾロの思念イメージで発動する。つまり、アゾロ自身の『心の力』の働き方次第で、自分の能力を良くも悪くもするのだ。

 




…To Be Continued.

⇒Next Episode.

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