∞30【エミルという男児(おとこ)】

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 アゾロの実弟『エミル』は、フルネームで【エミル・ナルサス・ディオアンブラ】という。

 

 『ナルサス』は母方の曾祖父に因む由緒ある名前であり、『エミル』の方は恐れ多くも神聖アレクシス帝国の今上きんじょう皇帝、要はいまの皇帝から贈られたありがたい名前であるらしい。


 次期『ディオアンブラ領領主』と目される伯爵家の長男にして、子豚と遊びながら親豚からの本気タックルをいなすことのできる5歳児。

 父であるディオアンブラ伯をして『……よけるだけならオレよりもうまいよ多分…うん多分』と言わしめる体捌きの『天才』。

 そして、ジゴロの才能のある『弱シスコン』でもある。



 当初エミルは、このお相撲スモウの最中に実姉の『小さいおっぱい』に触れるかも…という邪念を抱いていた。


 しかし、相撲のサークルの中に入った途端に『姉の胸を鷲掴んでやろう!』というエミルの邪念は雲散霧消した。もしかすると、それは神事としての側面を持つ相撲の『神聖さ』の為せるものだったかも知れない。


 5歳のエミルは心の中だけでこう思った。


 ……お姉ちゃんのおっぱいをもむのは、おフロでもどこでも『いつでもできる』!

 ……今はそれよりも。

 ……『一回いっかい』、お姉ちゃんに勝ちたい!


 エミルの小さな胸の内に炎の様に熱き闘志が灯った。その『何者にも負けたくない』という闘志は、いつもアゾロの胸の内に燃えているものと全く同質のものだ。

 弟の目の光が変わるのを見て、姉であるアゾロは心の中だけでこう思った。


 ……やっぱり、あなたも『わたしと同じ』ね……。

 ……来なさい、エミル!

 ……すぐにあなたを押し倒して、お姉ちゃんが柔らかいお腹にグリグリと頬擦ほおずりりしてあげるから!!



 『今年5歳』の弟ほどには、自分のなかの邪念を捨てきれていない『もうすぐ16歳』のアゾロであった。




…To Be Continued.

⇒Next Episode.


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