14. Story.2 ~【青い春の風】~②
14. Story.2 ~【青い春の風】~②
【青い春の風】を演じるしかなくなったあたしは覚悟を決めてスマホで検索をすることにする。何を検索するかは分かるよね?それは女の子同士の「受け」と「攻め」はどっちがいいのか……。
だって……あたしはわからないんだもん。小鳥遊先パイはどっちでもいいって言ってたけど……。小鳥遊先パイはそういう経験あるんだぁ……。誰となんだろう。ふとそんなことを考えると少し胸が苦しくなる。でも今は考えるのをやめることにしよう。
まず最初に調べたのは、攻める方と受ける方のメリットについてだね。攻受っていうらしいんだけど、これはどうやら男女関係なくあるみたい。攻受の逆になるのは受け攻めって言うんだって。そしてこの攻受にも色々とあって、攻の方が受けよりも優位な立場にあることが多いみたい。例えば攻めの方は自分がリードして相手を責めることができるとか。あと攻は相手を攻めることで興奮できるとかなんとか……。
攻受の特徴を調べてみた。攻めは相手に気持ち良くなって欲しいという感情からくるもので、受けは逆に相手に自分を気持ちよくして欲しいという感情からきているもの……。
そして女性が思春期の頃に同性に憧れたり、恋をしたりするのは別に普通で、通過儀礼の様に言われていたり。医学的に女性はバイセクシャルであるとの説もあるらしい。自分から積極的には誘えないものの機会さえあれば女性同士の経験も有り、という考えを8割程が持っているとも言われている……。
「………。」
あたしはスマホを見るのをやめて布団に潜ってそのまま寝ることにした。そして次の日の放課後。
「あたし。主人公の真野夏海をやります。」
「あら?桐山萌じゃなくていいの?」
あたしの言葉を聞いて微笑みを浮かべる小鳥遊先パイ。そういうのを知らないあたしが小鳥遊先パイの事を気持ちよくさせれないと思うし、仕方ないんだよこれは!あたしは……。それに、どうせやるなら、小鳥遊先パイに優しくされたいし……。
「ふーん。凛花はすごくエッチなのね?夏海を選ぶなんて」
「そんなこと……」
「だってこのシーン読んでみて?」
そう言って小鳥遊先パイが見せてきたのは萌が夏海をベッドに押し倒している絵だった。その絵を見て顔が真っ赤になってしまうあたし。
いや……確かにこういう感じの絵はあるよ!?だけどさ……実際に自分がされる側になると恥ずかしくて死にそうになるんですけど!!そんなことを思っていると小鳥遊先パイは続けて話す。
「このシーンは萌が夏海を何度も何度も絶頂に導くシーン。初めてなのにそんなにいっぱい気持ちよくなりたいんだ凛花は?」
「そういうわけじゃ……」
そう言いながらもあたしの顔はさらに赤くなっていく。そして小鳥遊先パイはニヤッとした表情で話を続けた。
もうやめてぇぇぇ!!!これ以上言わないでえええええ!!! それからも小鳥遊先パイの攻め言葉が続いた。あたしには無理ですぅうう!!こんなの耐えられません!!! 結局あたしはこの日1日中ずっと顔を赤くしながら過ごすことになった。ちなみにこの日の帰り道。小鳥遊先パイはあたしの耳元でこう囁いた。
「凛花、あのシーンはやるからね?」
それだけ言って小鳥遊先パイは歩いて行ってしまった。もうだめだあああ!!このままだとあたしの心臓が持たないよおおお!! そんなことを考えながら家に帰った。
家に帰ってからもあたしの頭からは今日のことが離れなかった。正直なところ嫌ではないんだけど、あんなセリフを言われるとどうしてもドキドキしてしまう。でもそれと同時に不安にもなる。
あたしが本当に小鳥遊先パイのことを満足させることができるのか。ちゃんと気持ちよくさせることができるのか。そもそも気持ちよくなる事ができるのか。
「はぁ……。」
今日何度目かのため息をつく。あたしに自信がないだけなのかな……。それともやっぱり男の人じゃないとダメなのかな……。
ん?なんか……。この気持ち【青い春の風】の主人公 真野夏海と同じ???
ヤバい……。もしかしてあたしってめちゃくちゃ感情移入するタイプ!?絶対そうじゃん!あたしが小鳥遊先パイの事を好きになるわけないって!だって女の子同士だよ???
でも……機会さえあれば女性同士の経験も有りと思っている人も……いやいや違う違う!
あたしは自分の感情がわからなくなり、しばらく悶え続けるのだった。
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