七 誕生日記念 

 彼女達はいつも通り入り浸ってる探偵事務所いつもの場所に足を運んでいる。今日の天気は雨だ。雨が降ると否が応でも梅雨を感じさせられる。私は雨が好きだけど、どうやら彼女達はあまり好きではないようだ。彼女の言葉の節々から雨に対する敵意を感じる。


「雨だぁ。雨って本当にイヤ。湿度は高いし、蒸し暑いし、髪は纏まらない。どうしてこんなにも超絶可愛い美少女がここに君臨しているというのに雨はやまないのかしら。」


「それはそうだけど、しょうがないじゃないの?ここ日本だし。後、えーっと、水の滴るいい女?って言うし。」


「って疑問系かよ。そこはきっぱり言ってくれるところなんじゃないの?」


 そうこう行っている内に目的地まで着いたらしい。彼女はいつもの調子で扉を開ける。


「超絶可愛い美少女の登場よー。」


 部屋の中から知らない人の声が返ってきた。


「いつもの奴らなら今はおらんぞ?」


「えっとそのぉ、どちら様でしょうか?」


「そういえば遭遇したのははじめてやな。話には聞いてるぞ?いろいろと巻き込まれて大変やなぁ。丁度、雨も強くなってきたし、しばし雨宿りでもするといい。幸い、40分もすれば雨も弱まる。ゆっくりしていくとよい。」


 そこにいたのはプラチナブロンドの長髪糸目丸眼鏡和服男であった。


「そこにでも座ってちょっとまちい。今茶でも淹れたるわ。」


 そんな彼の言葉をうけた彼女は拍子を抜かれていた。そう、イケメン過ぎて。あまりにも最近出会う人が美形も美形なやつらすぎてこういうことが多々起きる。

 一方彼は彼とて、その姿を見た時にただならぬ気配を感じた。まるで底が見えない、昔話によく出てくる知略に長けた化狐のようなものを感じた。そんなことを思っていた時に不意に彼と視線があった。一瞬時が止まったかのような錯覚に陥ったが、彼がウィンクを自分に向けて飛ばしてきたので、お茶目…なのかな?っと思った。


 そんなこんなで彼が戻ってきた。


「御茶持ってきたで。熱いかもやから気をつけて飲みな?」


「ありがとうございます。」「どうも。」


「で、最近はどうなん?綾君とクゾ君は。元気にやってる?何かあったら何でもあいつらに言いや。きっと何でも解決してくれるはずや。多分。」


「クゾ君????」


「ウチはね、元気にしてるよ♪強いて言えば湿気のせいで髪が爆発して困ってはいるけど。あ、シンプルに会話してるけど、名前知らないわ。自己紹介頼む。」


「おお、そうやった。初対面なのにいきなり話しかけてすまんかったの。一方的に知っていたからつい話しかけてしもうた。改めまして、わたくしの名前は狐月こげつ七。近所で骨董品アンティークのほうを収集してるただの店主で、今はここの留守番と二人に対する伝言を頼まれたただの高校生ということになる。たまはここにいるから今後ともよろしゅうな。」



 これがまた一癖も二癖もある糸目と彼女等との最初の出会いなのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る