孤独と蠅と偽神
@letn
第1話 蠅の偽神〈ぎしん〉
月の綺麗な夜のこと
僕は天空に伸びる巨大な十字架を首が痛くなるくらい見つめていた。
そこには、倒れた男が2人、ローブをまとった信者が五体、
牛の姿をした神官が1体いた、奴らを倒すのが今日の始末屋である
僕の仕事だ、倒れた男たちを目で確認するが、指先一つも動いていない、
死んでいるのだろう、信者がこちらに気づいて、ゾンビのように
奇声を上げながら向かってくる、信者の武器は鋭い歯と爪だ、
自分を落ち着かせ、腰から鉈を取り出し、一振りで5体同時に首を刈り取る、
固まって行動していたのがラッキーだった、次は神官だ、牛は簡単で
こちら見るなり突進してくる、それを見て壁際による、そして、
ギリギリでかわす、そうすると、牛は角がはまって動けなくなる
何十と繰り返した作業だ、角がはまっている間に首を刈り取る
成功したが、神官はまだ死なない、中心のコアを採らない限り蘇る
厄介な奴だ、早めにコアの摘出を始める、心臓を取り出し、
鉈で切り込みをつけ、手を入れてコアを採取する、すると牛はドロドロに
溶け、やがて無くなる、体が保てなくなるらしい、コアが手に入ったので
満足だ、鼻歌混じりにその場を立ち去ろうと思った時、
ブォォォオオンと大きな羽音をたてながら何かが近づいてくる、
やがてその影が僕を包み込む、とても大きい、そいつが目の前に現れた、
そいつは蠅を歪めたような姿をした化け物だった、見ていて気持ち悪い、
奴は言った「我が名はベルゼブブ、蠅の偽神である、抵抗するな、人間」
最悪だ、心の底からそう思った、偽神は神官の上位存在で災害と同義なのだ、
蠅の偽神、名は知れている、死んだ者を蛆の巣にしてしまう害悪、
まさか自分が遭遇するとは、あまりの不幸に舌打ちをしてしまう、
鉈を強く握りしめ、中指を立て奴に抵抗の意志を見せつける、それを見て奴は言った、
「我に抵抗するか、あまり痛みを与えるつもりはなかったのだが、仕方ない」
上等だ、みっともない最後を迎える気はさらさらなかった、
最後まで食らいついて、奴に一発喰らわせてやる、鉈を持って走り出す
反応して奴は尻から蛆を出してくる、全長2~3メートルの蛆を切り裂き、詰め寄る
鉈で奴の顔を傷つけようとするが、固くて刃が通らない、糞、
立て直そうとしたとき奴の腕が迫る、鉈で受け止めたが、押しきられてしまうため、
受け流す、必死に弱点を探す、やがて希望を見つける、
奴に飛び乗り突き刺す、ここならいける、必死に鉈を押し込む、暴れる奴など
気にも止めずに、やがて奴が垂直に飛び立つ、鉈の柄を掴んでしがみつく、
奴の羽が擦れるたびに腕が傷つく、そして奴は垂直に落下する、
今度は鉈を抜いて飛び降りる、狙いを定めて着地できず、背中を強打し動けない、
奴が上に乗り僕に向かって告げた、
「筋はよかったがもうひとつだったな、残念だ」
奴の顔が僕の前に迫る、最後の力を振り絞り奴の首筋に刃をいれる
「グハァァ」
痛がっている、いい気味だ、奴がもう一言
「お前ェ、許さんぞ」
といって動けない僕の腕を千切り始めた、全身に痛みが走り続けて
やがて僕のまぶたがとじた。
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