(一)-2

 玄関を入ってすぐ隣にあるキッチンとダイニングの奥に、何の仕切りもなくテーブルと椅子の置かれたリビングがあった。昔ながらの公団住宅ではあるが、通常なら畳敷きの和室であるハズのリビングは、数年前に別の棟の別の部屋から渋沢が引っ越してきたときにはすでにリフォームされており、フローリングになっていた。

 そのリビングにはこたつが置かれていて、この部屋の主である渋沢がこたつに入りながらテレビを見ていた。

 こたつの上には卓上ガスコンロが置かれており、その上には土鍋が置かれていた。鍋には既に水が張られていたが、それ以外のものは入れられていなかった。さらにガスコンロの回りには、一口サイズにカットされた野菜類や鶏肉、白身魚の切り身などが盛られた大きめの平皿と、グラス二個に汗をかいた缶ビールが二本置かれていた。


(続く)

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