2話(6)

 「やだって、そんな……わがまま言わないの!」


 「いや。私、絶対入るもん」


 ありすは頬をぷくーっと膨らませる。ありすは可愛いから、こういうのがすごく様になる。


 親譲りのふわふわで長い金髪とかぱっちりと開いた大きい瞳とかのせいで、小学生の時から男子に告白されるのを幾度となく見てきた。


 でも本人はそういうのに全然興味ないんだよね。


 そんなことを思いながらありすのことを見つめていると、ありすはまた大きい声で「入る!」と言った。


 「うわぁ、花瀬先輩って思ったより頑固……」


 樹理ちゃんがそう苦笑する。


 たしかに、思い返してみればありすはこういう人だった。一回言ったことは、絶対に曲げないんだよね。


 「ど、どうしようかな……これ」

 

 鈴木先輩も困ったようにありすの方を見ている。うーん……困ったなぁ。


 「こっちはネタがなくて困ってるんだよ。そんなときにおまえの相手するのなんて無理だから。さっさと帰って」


 鬼龍院先輩はパソコンの画面から目をそらさずそう言い放つ。


 「ふーん、ネタないんだ」


 ありすはそれに怯むことなく鬼龍院先輩の方に近づいた。


 ってありす! そんなことしたら鬼龍院先輩に怒られるよ……!


 そう声に出して言えるはずもなく、私は心の中でそう叫んだ。

 でも、ありすは鬼龍院先輩の真ん前まで近づいて、こう言った。


 「私、新聞にできそうな妖怪のネタ、知ってるよ」


 「ネタ、あるの?」


 鬼龍院先輩はパソコン作業をパタリと止め、ありすと目を合わす。


 やっぱり先輩、妖怪のことになると真剣なんだな。


 「うん、あるよ。聞きたい?」


 ありすが座ってる先輩を見下ろす。

 私はその様子を見てひやひや。


 「そうだ! いいこと考えた」


 ありすはニヤリとしてそう言う。うぅ……嫌な予感。


 「ネタ提供する代わりに新聞部いれてよ、鬼龍院先輩」

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