推しとの穏やかで心安らぐ日々

第55話 エピローグ


 よく晴れた日の王城。


 新緑の梢が艶々と光り輝く葉で包まれるリヴィオネッタの庭園を散策するのは、王子妃教育を早々に終えたミリオンと、若葉よりも尚キラキラと輝く瑞々しい美貌のリヴィオネッタだ。


「僕に宿っていた翠天は、悪戯好きで自由な心が本質だから、権威と利益で雁字搦めの王族の身で覚醒すると、闇落ちする未来しか見えなかったんだ。だから、王族の役目から逃げ回っていたんだけど、ミリに出会って考えが変わった。君となら一緒にいるだけで癒されるから、どれだけ踏み出しても僕が僕であり続けることが出来る。何より、王族と使徒の力で君を護ることが出来る」


 リヴィオネッタはつい先刻まで鬼気迫る怒涛の速さで執務を熟していたのと同一人物とは思えない、穏やかな様子でミリオンの隣を進む。そして、今日もまた、どこか照れ臭そうにミリオンがどれだけ大切かを滔々と語る。


 黒天こくてんとして覚醒したミリオンと、翠天すいてんとしての自分を受け入れたリヴィオネッタとの婚約は、いくつもの思惑が重なって、意外にもすんなりと認められてしまった。


 学園を中途退学していたミリオンの学力に対して不安視する声を上げる者もいたが、彼女が王子妃教育を受けるために王城へと通うようになると、瞬く間にその優秀さが轟く様になった。


(なんて素敵なの! 推しのリヴィオネッタの傍にずっと一緒に居られる上に、勉強までさせてもらえるなんて! それに王城の図書館まで利用し放題なんて……なんて素晴らしい環境なの!?)


 今日もワクワクの止まらないミリオンは、リヴィオネッタの隣でキラキラと瞳を輝かせる。そして微笑ましげに彼女を見詰めるの視線に気付いて抗議の声を上げるのだ。


「リヴィ~! 眩しすぎるからっ! キラキラとキュンキュンが過ぎて尊すぎるから―――! 」


 真っ赤になって逃げ出すミリオン。


「ふふっ。そんな可愛すぎる反応をされると、僕の悪戯心に歯止めが利かなくなっちゃうよ」


 そんな彼女を愛しげに微笑んで見守るリヴィオネッタ。


 ここからさらにリヴィオネッタがミリオンを構い倒すのが毎日の光景だ。



 互いを補い会う二人。



 ミリオンとリヴィオネッタは、穏やかで心安らぐ日々を手に入れたのだった。








《 happy ending 》


――――――――――――――――――――――

ミリオンとリヴィオネッタのパートは、これにて完結です。

――が、あと3話【後日談】として彼女らを取り巻くお馴染みの面々のお話が続きます。


本当の最終話、もう一人の『なりそこないの黒翼天使』の姿が見える《完》まで、どうぞお付き合いください(❀ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾ᵖᵉᵏᵒ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る