棘姫第一章「棘姫は笑わない」あとがき


 どうも、秋宮さジです。まずはここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。遊園地編の中盤からあとがきを辞めていたのですが、この節目にあとがきを書いてみようと思います。


 さて、とうとう第一章が終了しました! ここまで18万文字、かなりのボリュームです(笑) いやあ、最初は中編くらいで終わるかなと言う感覚で書いていたのですが、筆を走らせるうちに楽しくなってきまして。ヒロインレースというものにも興味があったので、処女作のうちにそちらにも手を……とどんどん布石をしていくうちに、ここまでのボリュームになってしまいました。


 そして、約一カ月にわたる休載。連載再開詐欺を繰り返してしまった僕に非があります。本当に申し訳ないです。ここで少しだけ言い訳をしておきますと、連載中にメンタルの不調が相次ぎまして。棘姫を書きたくなかった時期というものが存在したのです。そして、連載再開しますと言った手前、読者様に合わせる顔が無く……。


 はい。申し訳ございません。次章ではそんなことが起きないように誠心誠意努めていく所存でございます。ハイ。とまあ、前置きはこんなところで。


 ◇


 第一章で僕が印象に残っているのは、やっぱり羽成兄弟でしょうか。遊園地編では、問題児のほうが派手にやってくれました。


 秋宮自身、自作に男の娘というものを登場させたいと常々思っていたのです。その男の娘と主人公が絡むことにより、それを妬ましく感じるヒロインをえがきたかった。それが、自分の中でもうまい具合に書けたのかなと言う感じです。


 そして、ネットとリアルでの齟齬、もしくは乖離。


 理想の自分で居られる、ネットの世界において、現実というものは非常にコンプレックスとなって付きまといます。一哲君自身、昔から周囲に「女の子みたいだ」と言われ続けていたのもあり、ネトゲの世界でその鬱憤を晴らしていたのでしょう。


 不登校になったのも、だいたいはそれが原因です。他の同級生の男の子達はどんどん背が高くなっていって、顔つきも男らしくなっていくのに、僕だけ……背丈も、顔つきも女の子のようだと。そう思ったのでしょう。


 ネトゲの世界での一哲君は「ロキ」。アスガルド部隊の二番手にして、小鎌シックル使い。小鎌を用いたクラウチングスタート攻撃も、実は陸上部の短距離走者だったことが関係していたりします。読者様の反応を見るに、ここに気が付いた方はどれだけいらっしゃるのでしょうか……(笑)


 ロキの容姿は作中にもある通り。


>捻じ曲がった赤黒いツノに、消し炭色の肌。そこに彫り込まれた、禍々しいタトゥー。髪の色は、両手の鎌の刃と同じ烏羽色。その瞳は真紅で、眼球結膜は黒(以下略)


 これは一哲君が思う「男らしい姿」の体現なのではと、作者自身思っています。そして、ロキは細身にして筋骨隆々。要は細マッチョ。男らしくはなりたいけども、かといって哲太君のようにムッキムキのゴリラにはなりたくない。というのがひしひしと伝わってきたり、伝わってこなかったり。プロテインが欲しいと哲太君にねだっていたのも、それがあったのでしょう(第09話参照)


 はい。ここまで、一哲君についてしゃべくってしまいました。今作のヒロインも主人公も抜きにして(笑) これは……どうなんでしょう(笑)


 では、次こそ柏木ちゃんのお話をしましょうか。


 ◇


 柏木葵は、紀里高等学校の優等生にして、高嶺の花。紫がかった銀髪に、赤紫色マゼンタの瞳を持つ女子高校生です。その近寄りがたい容姿と、触れると(精神的に)ケガをする特徴から、薔薇の棘になぞらえて「いばらひめ」と呼ばれています。


 そして、ネットゲーム内での彼女は「蕎麦」。なぜこの名前なのかは、今後触れていきたいところですが、何はともあれ彼女は蕎麦なのです。そして、柏木ちゃんはネットではネナベをしていました(女性が男性を名乗ること)


 柏木ちゃん自身、女性としてゲームをやっていると、出会い目的のプレイヤーや嫌がらせをしてくるプレイヤーに遭遇したり等あったようで、それが原因で性別を詐称するようになったと言っていましたね。これについても、第二章で更に掘り下げていきたいと思っています。


 いやあ、そうなんですよね。ネットって言うのはやっぱり恐ろしいものなのですよ。そして、五年来の付き合いというと当時柏木ちゃんは小学五年生とかのはずなので、その時期から自衛手段を持っていたというのは偉いですよね。


 その為に、親友のカスミ君の前でも一人称を「僕」にしたり、ボイスチェンジャーを用いて男性ボイスにしたりなど頑張っていました。でも、柏木ちゃんの様子を見るに感情が高ぶったりした際は一人称が「僕」になってるんですよね。


 カスミ君の前でだけ。これは、僕は君の親友なんだよというアピールなのでしょうか。それとも、「蕎麦」で居た期間が長い影響で、一人称「僕」の方が話しやすいとか、そう言うことなんでしょうか……。あれ、作者? ちゃんと考えてますよ!!


 そして、第一章の終わりで。柏木ちゃんは主人公のカスミ君以外にも、心を開けるようになっていました。これが大きな変化ですよね。その背景には、やっぱり主人公との出会いがあった。これが、僕がえがきたかったポイントです。


 エピローグの、


赤紫色マゼンタの花火が、一際明るく花を咲かせた。柏木さんの赤紫色マゼンタの瞳が、その花火の全てを反射していた。


 は、個人的に一番よく出来た締めなのかなという印象です。ちなみに、あの後カスミ君は柏木ちゃんをちゃんと家に送り届けたようですよ。まあ、浴衣姿で歩くのもままならない女性を一人にするなんて俺には出来ない、とでも考えたのでしょう。


 さて、ここで問題です。カスミ君は柏木ちゃんを負ぶって帰ったのでしょうか?


 チッチッチッチッチッ……。


 残念ながら、答えはNO。カスミ君は鼻緒ずれした柏木ちゃんの足を絆創膏で応急処置し、帰り道に寄ったドラッグストアで消毒液を購入、さらに処置を施しました。

 いやあ、期待は裏切る奴ですが、ちゃんとここまでしてくれるんですよね。


 まあ、という余談は置いておいて。今回はこのくらいにしておきましょうか。あんまり長いと、先の展開のネタバレとかもしちゃいそうなので(笑)


 さて、棘姫第二章「白雪姫しらゆきひめは隠したい」は十月中の公開を予定しています。そう、待ち望んだヒロインレースです。ここまで、めちゃくちゃ長かったです。

 ちなみに、このヒロインレースについて構想していたのは三か月前、めちゃくちゃ遅くなりました。ですが、やりたいことはもう決まっています。


 それでは、今後とも「棘姫」をよろしくお願いしますということで、このあとがきの締めとさせて頂きます。宜しければ、フォローはそのままで。次章をお楽しみに。


 2023/9/21 秋宮さジ

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