第23話 狙われる未莉パート1

(優吾さんは今日もかっこいいな〜)

 3年生の教室の扉の影から優吾さんの姿を伺う。

 サラサラの黒髪に、ピンと伸びた背筋。その姿は私にとってはあまりに輝かしいものだった。

「ねえ優吾!なんで返事くれないのよ!」

 せっかく優吾さんの姿を見ているのに邪魔が入ったみたいだ。隣のクラスからツインテールの女が今にも泣きそうな顔で優吾さんに対して汚らしい怒号を飛ばす。


(このクソ女…!優吾さんから離れろよ!それ以上近付いたら殺すわよ!?)

 思わずツインテールの女に対して殺意を抱いてしまった。

(早く離れなさいよ!優吾さんが嫌がってるじゃないの!)

 その女に責め立てられている優吾さんの表情は酷く困って見えた。

 私はその女にそっと近付く。


「は?あんた誰なのよ!?」

 ツインテール女はすぐに私に気付き、ヒステリックな声を上げ始める。

「優吾、この女、誰なのよ?」

 ツインテール女が責め立てるような口調で優吾さんに迫った。

「あなたは誰ですか?優吾さんを困らせているのはあなたですか?」

 私は何の躊躇もなくツインテール女に言ってやった。

「さっきからずっと優吾さんに怒鳴ってましたよね?なんでそんな事をするのですか?」

 私の言葉にツインテール女は何やら怯えているような様子を見せる。

 そして、青ざめた表情のまま早足で隣の教室へと帰っていく。


「ごめんな。彩夏。アイツはあれでも悪いヤツじゃないんだ。だから許してやってくれ。」

 優吾さんはあんな奴に対してでも優しい。だから私が優吾さんを悪いヤツから守ってあげなくては。

 あんな女、優吾さんには相応しくない。あのまま放置しておけば彼に対して悪影響を及ぼしてしまう。


 それに、将来優吾さんの恋人になるのはこの私なのだから。私のファーストキスも、初めてを奪うのも全部優吾さんなのだから。将来優吾さんと結婚するのはこの私なのだから。


 だから、優吾さんを困らせるような輩は早いうちに消しておかなきゃね…。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る