第21話 一体何故

 お風呂から出た後にスマホを確認してみると、未莉からおびただしい数のメッセージが届いていた。


「なんで無視するの?」

「私のこと嫌いになったの?」

 そんな内容のメッセージが何十件、何百件と届いている。

 俺は慌てて

「ごめん。お風呂に入ってた。」

 と送る。けれど未莉は全く分かってくれないみたいだ。

「なんで?スマホを濡らさないように工夫するなり出来るでしょう?」

「お風呂に入りながら返事くらい出せるよね?」

「なんでずっと無視してたの?」

「私がこんなに寂しがってるのに返事くれないだなんて最低!」


 次々と送られてくる怒りのメッセージに俺はどうすればいいのか分からなかった。

「本当にごめん」

 それしか言えない自分が情けなかったけれど今はこう言うしかない。

「どうせ適当に謝っておけばいいやとでも思ってるでしょ?」

「もういい。病んだ。優吾まで私のことを捨てるんだね」

 未莉の怒りは収まらないらしく、ものすごい勢いでメッセージが送られてくる。俺はもう訳が分からなかった。第一、未莉とはまだ知り合ったばかりだ。お互いのことなんてそれほど分かっちゃいない。


 もう俺の力じゃどうすることも出来ない。暫く考えた末に沙友理に相談することにした。

「もしもし?」

「あっゆうくん!今から電話かけようと思ってたところなんだよ!」

 スマホの向こうから沙友理の嬉しそうな声が聞こえてくる。

「いきなりごめんな。ちょっと相談があって」

「どうしたの?ゆうくん?何か困ったことでもあったの?」

「それが、つい最近知り合った隣のクラスの子の扱いに困っててさ…」

「そうなんだ。その子ってどんな子なの?」

「お風呂に入っているからメールの返信出来ないって言っても分かってくれないんだ。

 お風呂に居てもスマホは触れるでしょ?って言って聞いてくれなくて」

 俺の言葉に沙友理は少し黙り込んでから


「その子、かなり困った子みたいね。それでも我慢してるゆうくんはとても偉いよ」

 と優しい声で俺に言った。

「ありがとう。沙友理。それとこんな愚痴零しちゃってごめんな。」

 沙友理は楽しい話がしたかったはずなのにこんな愚痴を聞かせてしまって申し訳なかった。

「大丈夫だよ。ゆうくんの役に立てたのなら私は幸せだよ。」

「ありがとう。沙友理、また明日な」

「うん。また明日お話しようね」

 お互いそう言って通話を終わらせた。


「わたしのゆうくんを困らせやがって…絶対に許さない…」


 通話を終わらせる際に沙友理が何やら呟いていたが聞き取ることは出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る