第18話 初めての鬼電
今日は未莉のことが頭から離れなかったせいであまり授業に集中出来なかった。
心なしか京平や彩夏、紗枝、小花ともまともに話せなかった気がする。
俺はやや覚束無い足取りで駅へと向かっていた。
「どうしたんだ?浮かない顔して」
背後から京平が話しかけてくる。
「最近ちょっと疲れててな」
「そうなんだ。あんまり無理はするなよ」
京平は優しい口調で言うと俺の肩を軽く叩いた。
「お前がよく話してる小花と紗枝と彩夏と沙友理って人、多分お前のことが好きだぞ」
京平の一言に思わず大声を出しそうになる。
「お…おいやめろよ…」
小さな声で京平に伝えるが、当の本人はお構いなしだ。
「よく考えてみろよ。別段好きじゃない人にわざわざあんな態度取ると思うか?」
京平の言葉を否定出来ない。もしも俺が彼女らの立場に立てばわざわざ興味のない人にあのような態度を取ることはないだろう。
「そういうことなんだよ。優吾。いい加減認めろ」
京平が真面目な口調で言った。
「だから彼女らの気持ちを尊重してやれ。それから小花、紗枝、彩夏ちゃん、春夏ちゃん、沙友理さんのどちらかと付き合うか、みんなと友達のままで居るか。それはお前がしっかり考えろ」
「分かったよ…」
「お前はまだ何も分かってないかもしれないけれど、あの子達は本気なんだよ」
そう語る京平の横顔はひどく真面目だった。
京平と2人、駅のホームで電車を待っているとスマホから着信音が鳴り響く。
「なあ、ずっと思っていたけれどお前のスマホってずっと通知音鳴ってねえか?」
京平の言葉に俺は思わず背筋が凍りそうになった。慌ててスマホを制服のポケットから取り出してメールを確認する。
「ねえなんでメール見てくれないの?」
「あたしのこと嫌いになった?」
「なんで無視するの?」
「寂しいよ…」
「どうしてすぐに既読付けてくれないの?」
「早く返事して…」
「なんで他の子とばかり話してあたしには話しかけ
てくれないの?」
「優吾はあたしのことが嫌いなんだね」
「早く返事くれないと死んじゃうよ…」
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
不在着信
「ひ…ひい…」
俺は思わず悲鳴を上げてしまいそうになった。隣に座っている京平もギョッとした表情で俺の顔とスマホを交互に眺めている。
「おいそれって…」
青ざめた表情で固まっている京平。
「ああ、隣のクラスの未莉ちゃんだよ…」
「未莉…あの子はメンヘラだって有名なんだぞ。」
京平の一言に俺は固まってしまう。メンヘラってあのメンヘラなのか?
「優吾、お前…とんでもない貧乏くじを引いてしまったな」
京平がやれやれという表情で言った。それから着信音や通知音が途切れることなく鳴り響いたが、スマホを確認する気にはなれなかった。
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