第17話 メンヘラ少女
次の日、俺は上り列車を駅で待っていると同じ高校の制服を着た少女が目の前でワイヤレスイヤホンを派手に落としてしまった。
俺はすかさずそれを拾い上げると出来るだけ優しい表情を浮かべて彼女に渡す。
彼女はイヤホンを俺の手から受け取ると可愛らしい声で
「ありがとう」
と言った。俺は彼女の顔を思わず見てしまう。色白で大きな目に涙袋、唇は赤くて血色が良い。胸まで伸ばした髪の毛をツインテールにしている。客観的に見ても可愛らしいと言える程の容姿だった。
「ねえ…あなたの名前を聞いてもいい?」
突如彼女が口を開いた。俺は戸惑いながらも
「3年2組の佐藤優吾です。」
と答える。すると彼女はふんわりと微笑む。
「あたし、3年3組の安田未莉。よろしくね。」
「ねえ優吾、あたしとあなたは同じ学校で隣のクラスなんだからこれから一緒に学校に行かない?」
彼女…未莉は俺が同じ学校で隣のクラスだと分かるとすぐに砕けた口調で接してきた。
「いいよ。そろそろ電車来るから白線の後ろ側に立っていようか。」
「優吾は優しいね。」
未莉は俺の顔を見て微笑んだ。
「あたしさ、人に優しくされた試しがないから嬉しい。」
先程までの微笑みは何処へ行ったのだろうか。未莉は一瞬にして暗い表情に変わっていた。
「ねえ優吾、あなたってSNSやってるよね?」
未莉が真顔のままこちらに迫ってくる。
「もちろんやっているよ。」
俺はそう言ってSNSのアカウントを未莉に見せた。彼女はあっという間に俺のアカウントをフォローした。
「これでいっぱいお話しようね!」
未莉がパッと明るい表情になる。それから俺たちは一緒に電車に乗って学校へと向かった。
教室に上がって席に着き、のんびりとお茶を飲んでいると不意にスマホから通知音が鳴り響いた。
慌ててスマホを開くとなんと未莉から大量のメッセージが届いていた。
「教室着いた?」「今何してるの?」「おーい」
「返事してよ」「なんで返事くれないの?」「早速あたしのこと嫌いになった?」「酷いよ…」「今すぐ返事ちょうだい」「寂しいよ」「なんで無視するの?」
あまりの衝撃に俺は思わずスマホを落としそうになってしまう。
「う…嘘だろ…?」
思わず声が漏れてしまった。それを聞いたのか小花と紗枝が
「どうしたの?」
「何かあった?」
と気にかけてくれるが、二人に心配を掛ける訳にはいけない。
「大丈夫だ。気にしないでくれ。」
俺は二人にそう言っておいた。
「今学校に着いた。返事は帰ってからするからまたな。」
俺は未莉に返信を一通送ってからスマホの電源を切った。
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