第9話 崇拝

 私、小花は主の居ない右隣の机を思わず眺めてしまった。

 やっと優吾くんの隣になれた。やっと優吾くんとお話できた。言葉では表せないほどの大きな喜びが胸いっぱいに広がる。

 わざわざ放課後に教室に忍び込んで彼と京平の机の位置を変えた甲斐があったものだ。


「おはよう、小花」

 そうやって私に朝一番に声を掛けてくれた優吾くんの姿が忘れられない。

「小花って小説を読むのが好きなんだな。俺も小説読むの好きだよ。」

 そう言って微笑んでくれた優吾くん。その姿が可愛くて愛おしくて思わず口元が緩んでしまう。

 優吾くんは私にとって神様なんだ。その優しい姿も笑う姿も全部私の目には神々しく映る。

「へえー小花ってゲームとアニメも好きなのか〜」

 目を輝かせてそんなことを口走る優吾くんはとっても可愛かった。


 私は先生に見つからないようにこっそりとスマホを取り出して優吾くんのSNSをチェックする。

 すると、3人の女子とリプ欄で仲睦まじくやり取りをしているのが目に入った。

(クソっ…他にも私の優吾くんを狙っているヤツが居るのか…!)

 激しい嫉妬の炎が全身を包み込むかのような感覚に襲われる。

 神様のような優吾くんに対してこんなにも馴れ馴れしい口を聞くだなんて許せない。今すぐにでも消してやりたいと思った。


 そんなことを思っているうちに優吾が教室に帰ってくる。私は思わず彼の顔をぼんやり眺めてしまう。彼は私と目を合わせると優しく微笑んでくれた。

「小花、これからもよろしくな。」

 彼の口から優しい言葉が溢れる。

「ありがとう。私、優吾くんみたいな神様なんかと話してもいいのかな。」

 私が不安を漏らすと彼は一瞬キョトンとしてから優しく微笑む。

「俺なんか神様じゃないよ。」

 そう言って謙遜する優吾くんもとっても可愛らしい。

「優吾くんは私にとって神様だよ。」

「そう言ってくれてありがとう。」

 やっぱり優吾くんは神様だ。私なんかがこんな神様と仲良くしてもいいのだろうか?という不安が胸いっぱいに広がる。


 私は優吾くんのことが大好きだ。優吾くんは神様のような存在だもの。私は彼のためだったらなんだってしてやる。


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