物々依存症 始まりの物語
藤島
第1話
ほんのりとかすかに、夜が前からきた自転車のライトによって照らされた。
わずかな光だったが、闇に慣れた目には十分すぎるほどの光だった。さて、どちらに避けようか。
右か。左か。
結局、ぶつからなければいいだけの話なんだから、どっちでもいいんだけどさ。
自転車は、僕が動く前に僕の脇を通り過ぎてどこかへ行ってしまった。
冷たい、身体を刺すような冬の空気の中、独りとぼとぼと暗い道を歩く。忘れた頃にぽつん、ぽつんと外灯が立っているが、通りのもの悲しさは隠せなかった。
時折、足早に僕の横をすり抜けていく人たちは、寒そうに身を縮めて、でもどこかうきうきとした様子で歩いていた。きっと家では温かい食事と家族が待っている人たちなんだろう。
時刻は、もう夜のご飯時だ。
僕は、ぼんやりと歩き続けた。そのうち、視界にきらびやかな装飾の明かりが入ってくる。駅から続く大通りに出た。特に決まった目的地があるわけでもない散歩だったが、チカチカと目が痛くなるような明かりに、空虚な気配を感じて憂鬱な気持ちになる。僕は白い息を吐きながら、行き交う人を横目に体の向きを変えた。
早く家に帰ろう。
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