傘がない

業 藍衣

傘がない

見知らぬ街に

一人出掛ける

暗く静かに流れる空が私を

見下す

突然降り出した雨に濡れるが

手元に傘は無い

辺りを見回すも

コンビニを見つけることすら出来ない

慌てふためいき

建物の陰に身を寄せる


足元の水しぶきをかわし

陰から影へ

渡り歩き

先を急ぐ

雨は勢いを増し

豪雨となってくる


私は壁に寄りかかって立ち止まり

一人で立ち尽くす


当たり前に使ってきた傘

そのありがたさに今

思いが至る

雨に濡れる

こんな小さなことで身動きが取ない

今更ながら

自分の弱さを痛感する


スマホを

ポケットの奥深くにしのばせ

濡れたまま歩き出す

途中ですれ違う人も同じように

傘を持たずに歩き続けていた

傘がないそれだけの事


強く降り続く雨を恨むより

濡れてでも先に進む

そんな事に意味がある筈もないけれど

雨に打たれながら想う

人は強さを備えている


傘があろうとなかろうと

雨に濡れても

そう死ぬことは無い

自分を信じて進もう

傘がなくても

ずぶ濡れになってしまっても

大丈夫


傘がなくても立ち向かおう

土砂降りの雨の中へと

強く歩みを進める

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