9/28 静かな洋服 ※病み上がりのため15分延長して完成させた。

 あたらしいままはやさしかった。ほしいものはなんでもかってくれたし、かていほうもんもわすれずに、じゅぎょうさんかんもちゃんときてくれた。もちろんうんどうかいもちゃんときてくれた。あかいおじゅうのおべんとうばこをもって。ぱぱはしごとでいそがしかったからままひとり。でもそれでよかった。ままはおうえんにきているだれよりもきれいだったから、いるだけでよかった。やさしそうだけどいつもつかれたようなかおをしているほかのおかあさんたち。ほんとうのままではないんだからきれいなのはあたりまえだろといわれることもあったけどわたしはきにしなかった。そのしょうこにだれがそんなことをいったのかもうぜんぜんおぼえてない。

 わたしがちゅうがっこうにはいっても、ままはあいかわらずきれいなままだった。あたしはすいそうがくぶにはいってふるーとをふいた。どこかとおくのやまのなかでかわのせせらぎをききながらさえずるとりのねいろをそうぞうして、まいにちいっしょうけんめいにれんしゅうした。ぶしつでもいえでもそしてきんじょのかわべでも。あるひいつものようにかわべでれんしゅうしていたらままがきた。つばのひろいぼうしにくろいわんぴーす。おもえばそとにでるときはいつもそのかっこうだった。ごめんねあきちゃん、ままそのおと、あんまりすきじゃない。そうだねまだへただったね、というと、ままはそういういみじゃないとわらった。けどみけんにしわはよったまま。わたしはふるーとをかまえるのをやめた。そしてぶかつをやめようとおもった。

 わたしはこうこうにはいった。すきなこができて、こくはくしてつきあった。いえによんだらたまたまままはそとにでていた。だれもいないいえのなかでどちらからともなくちかづいて、おたがいにみつめあっていたら、だれ? というこえがした。ままだった。くろいかいものぶくろをてにした。あいかわらずきれいなまま。どんなたべものをかったのかなにもわからない。

 かれはあいさつしようとしたけど、ままはそれをてでせいしていった。ねえあきちゃん、このかたをおみおくりしていただけるかしら。ままきゅうにぐあいがわるくなったから。わたしははい、とうなづくと、かれをげんかんにあんないした。かれはなにかいいたげだったけど、わたしはなにもいってほしくなくて、ただごめんねといってかれをちからまかせにげんかんのそとにおしだすと、どあをおとをたててしめた。よくじつからかれはくちをきいてくれなくなって、いっしゅうかんごくらすでいじめがはじまった。わたしはがっこうにいけなくなった。そしていままでずっといえにいる。

 いま、なんじだろう。いまなんにちだろう。そのまえに、いま、なんねん?

 わたしはいくつなんだっけ。そのまえにここはどこ、わたしはだれ。

 めのまえにさくがあって、つばのひろいぼうしをかぶってくろいわんぴーすをきているひとがみえることはわかる。わんぴーすにはしみのようなものがついているのかもしれないとおもったこともあったけど、ただのさっかくだとおもう。わたしはめがわるいから。ままはなんでいつもこのふくをきているのか。もういえにきるものがないからだ。ぱぱがどこかにいってから、おかねもない。だからままはさみしくて、わたしにでていってほしくないからこういうことをする。さっきからりょうてがいたい。わたしはしろいふくをきて、いすにぐるぐるまきにされている。もうあきちゃんがどこにもいかないように、するためよ。ねえままこどものころからずっとあきちゃんのいうこときいてあげたでしょう。ほしいものはなんでもかってあげた、いきたいところにはどこにでもつれていってあげた。だからこんどはあきちゃんがままのわがまま、きくばんよ。

 ままいわくこのしろいふくをきているとわたしがしずかになるそうだ。たしかにこれをきているともうふるーとはふけない。とっくにふきかたなどわすれてしまったけど。

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