9/15 緑のハンガー ※15分経過時点で書きかけだったが、修羅場の結末まで書きたかったので15分延長して完成させた。

「田中さんちょっと」

「はい?」

「あなたあのディスプレイなに? 今何月? 7月でしょう? この暑苦しい時期にあんな長袖長ズボンの暑苦しいコーデ作って、あなた一体何考えてるの!?」

「先輩、あれがただの森ガールコーデに見えますか?」

「何なのあなた!? あんな季節感無視の仕事しといて煽る気!? ちょっとあんたもういいわここじゃなんだからもう裏来なさいよ!!!」

「いえ、ここで説明します。全部説明出来るので。先輩今お時間大丈夫ですか?」

「いい度胸ねあんた・・・・・・大丈夫だから今あんたと話してんじゃないの!? さあ説明してもらおうじゃないの!!」

「あ、お客様だ。いらっしゃいませー!!」

「いらっしゃいませー!! どうぞお手に取ってご覧くださーい。・・・・・・さあさっさと説明しなさいよあんた、お客様また来ちゃうじゃないの!」

「はーい・・・まず質問です。このコーデの舞台はまずどこでしょう!」

「山に決まってんじゃないの!! しかも隣のワークマンさんのマネキンに似てる山ガールコーデよ!! あなたこの意味分かる!? うちがあらぬ疑いを持たれるという意味でコンプライアンス的にも危ないコーデなのよこれは!?」

「そう、舞台は山です。でもこれ、本当に山ガールコーデでしょうか?」

「あんたそれどういう意味よ。まさかあんた、最近話題のバリ山行ルックですとか言い出すんじゃないでしょうね!? 最近スマホで何やら読んでいる所からして、あやしいと思ったわ。・・・あのねあなた、かぶれちゃだめよ。そもそもうちの服はそういうコンセプトじゃないの!! インスタ映えの世界に戻ってらっしゃいよその方がまだ健全よ!!!」

「先輩、話聞いて下さい。私まだ喋ってる途中です。もちろんバリじゃありません。バリなら頭に覆面マスクしないと完成しません。そういうキラーアイテム、今後うちも展開したらワンチャンウケるかもとは思いますけどタイミング今じゃないと思ってます。もう分かんないなら、ちょっと、服に触ってみてくださいよぉー」

「・・・・・・あらなんか、ひんやりしてるわね」

「このジャケットの所とか、もっと涼しいですよ。パンツも。まさに着るクーラーです」

「ちょっとこれ、どうなってんの!? うちの服こんなんじゃないわよ!?」

「ふふふ、知ってますよぉ。これ、うちの商品じゃないですもん。それに舞台は山ですけどこれ、山フェスコーデです。で、この腰の所にあるの、8階のミックカメラのセール品。携帯クーラーくんとか言ったかな。・・・先輩、月初の総朝礼でうちの卯勢丹の社長、何て言ってたか覚えてます? 今月から全館挙げて主体性を意識した動きをしようとか言ってましたよね」

「確かに仰ってたけど、あなた、店舗跨いでこういうことやるんなら主任のわたし通してくれないと」

「もちろんお話はするつもりでした。でもその前に内輪で物作ってプレゼンする機会は必要でしょう。だって前例ないんだから。先輩も資料だけじゃ安易にゴーサイン出せないですよね立場的に。だからこうやって試作品作って、最終確認してたんです」

「・・・・・・あなた、それならそうって」

「分かってたら初めから認めた? でもその前に決めつけて怒鳴って来たじゃないですか。だから先輩の話はとりあえず最後まで聞こうって思ったんです。いくらでも説明出来るって私言いましたよね」

「・・・まあそれは」

「でも残念だなあ。先輩いつも言ってますよね。ファッションに限らずいろんな所にアンテナ建てて、情報収集しろって。毎日ニュース見ろって。先輩がそれ実践してたら何となくでも連想出来たはずですよ。SDGSとエシカル消費と異業種コラボ。あと山ブームもか。何年も前から、毎日のように言われてたことですよね」

「・・・・・・」

「でもあーここまでボロクソに言われたのショックだなー。言い方ちょっとパワハラ入ってたからほんとショックです。この緑の造花のハンガー見た時にもし閃いてくれてたら。そしたらこれ、正真正銘先輩のお手柄になりましたよね。私も、先輩のことちょっとは見なおしましたよ」

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