8/12 寒い車
聞いてくれよ。最近新しい車を買ったんだよ。ランボルギーニ? あんな派手車、目じゃねえよ。堅実な所でベンツ? BMW? おいおいそんな普通の面白みのない車、やめろ。俺とお前、何年の付き合いだっけ? 4年落ちのベンツで手堅くイキる奴じゃないこと位、いい加減分かるだろ。アウディ? お、もっと庶民的な所に行ったな。レクサス、俺おっさんじゃねえよ。プリウス? ディカプリオの専用車じゃねえかあれ。じゃあ、じゃあ、テスラ? おいさんざん引っ張っといてテスラかよ! プリウスミサイルより強力なテスラロケットかよ。俺を殺す気か。たまに笑えねえ動画で挙がってんだろ。昼間にやるロケット花火みたいなもんだからなあれ。
てか大前提として、俺に言わせれば、そもそも自動運転を信用してる時点でダメなんだよ。AIを無条件で信用すんな。一番信用出来るのは自分の身体、とりわけここと目と耳なんだよ。いいか運転っていうのはどこまでもアナログなもんでなきゃダメなんだよ。
――大自然のささやきに耳を澄ませることで、ありとあらゆる危険を未然に察知してハンドルを切る。その先が崖でも、別にいいじゃない。崖から落ちた先に新たな人生があるのなら、それも必要な犠牲に過ぎない――
という精神で俺は車を買ったわけ。はい何の車でしょう? ジープ? 自衛隊仕様の? はい外れ。でもあえて言うなら、ちょっと惜しい。バットモービル? 売ってねえだろあれ。てか変形が複雑すぎて大体の人間の知能では使いこなせんぞあれ。キャデラック? うーんまあ地に足は付いたけど、あえて言うなら、ここは日本じゃボケぇ! 軽トラ? おおいい線言っとる! 俺的にはセカンドカーはオーソドックスな軽トラにしたいけど、今の車買ったから貯金なくなった。ミニバン? おいふざけてんのか真面目にやれよ殺すぞ。え、じゃあ、霊柩車……? はい当たり当たりだけど、もう一声! 〇〇仕様の? はい〇〇仕様の? 霊柩車のどこが空いたら面白い? どこが空いたら便利?
おい引かずに答えてくれ。……はい、まさかのまさかです。俺は買ってしまいました。そもそも市販されていたことに驚きです。そしてそれを持ち込みでカスタムしてくれる業者が実在したことも。
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