6/16 明るい布団
「今日からイメチェンすることにした」
「どしたん急に」
「いや、今6月やん、梅雨の季節やん? 湿気が溜まっている時期に俺らまで暗かったらどうなんって話よ」
「あー、でもまだ今年梅雨入りしてないんとちゃう? 雨ばっか降ってるイメージないやん」
「……ええんや細かいことは。要は気持ちの問題やこういうことは。じめじめして暗いよりカラっと明るい方がええやろ」
「まあ」
「ファブリーズと布団乾燥機やったらどっちがいい? ファブリーズは湿らせるだけ湿らせて臭い取って終わり。なんか手抜きな感じやろ。その点布団乾燥機は極太ノズルで一気に吸引、更に温かさまで付いとるんや。どっちを見習うべきかは明白やん?」
「まあ……ぶっちゃけ俺はファブリーズの方がええかな。俺毛布やから、布団乾燥機さんのありがたみは……正直分からん」
「それはすまんかった」
「ええよ皮の問題やんそれは。皮はまあお前の、アイディンティティやな。で、どうすんの、イメチェンってことはそれを変えんの?」
「おう」
「今いちご柄やん。かわいくてええと思うけど、次は何すんの?」
「……ゼブラ柄とかええかなって思てる。最近生徒会に入ったみたいやし」
「彼氏も出来たな。でもギャルではないやろまだ」
「それは本人が目指してないと思う」
「…いや分からんよ。勉強出来るギャルを目指しとるかもしれん。ある意味唯一無二やから推薦に有利や」
「……ビリギャルおったやん」
「方向性が微妙に違うやろ。ビリギャル確かにおったけど、今はもう結婚して海外におる。その意味でもうあのキャラを卒業したわけや。で、今はあの席は空席。しかもこれは芸能界の話、一般人の世界は定かではない。現ビリギャルはおるかもしれんしおらんかもしれん。でも重要なんはおるかおらんかに関わらず目指すのは早い方がええということや」
「……」
「いずれ蹴落とし合いするんなら、先に始めてちょっとでも優位なポジション取っとく方が利口やろ。ちょっとでも高いポジションにおったらそこから相手のことを俯瞰出来て弱点も見えてくるっていう訳や。地の利を利用した攻撃の方がはるかに効くと思うで」
「……なんか話が壮大になって来たな。俺はただあの子を元気づけたいだけなんやけど」
「分かる分かるよそれは。でも黙って聞いてくれ。俺がなんでこんなことを言うかというと、俺は毛布や。つまりもう少ししたら洗濯されて冬までしまわれる。今は異常気象のお情けで使われてるけどな、あと一週間もしたら完全にしまわれる運命なんや。夏から秋に掛けてはお前と、あの夏場だけちょろっと乱入するリゾバ感覚のタオルケットとか言う奴だけ。……俺は未だにあいつの役割がよう分からん。寒いならクーラー切って寝たらええものをなんであんなもんに頼るんか……。とにかく、おれとお前との仲やないか。最初に知り合って何年になる? もう5年になるか。お互いにブランドの名前背負っとる責任もあるからいい加減な仕事出来んやろ。主が無意識に求めとることを慮ってさり気なくやるんが良品の務めというやつや。……頼んだで」
「……お、おう……」
「ほなイメチェンの話に戻るけど、最初は何する? その路線でやるなら俺は最初にパンダ挟んどいた方がええと思う。いきなりゼブラやったら十中八九びっくりするから。パンダで緩い流れ示してその次にゼブラ、タイガー、ピンクタイガー、極めつけがライオンやな。浜崎あゆみ大先生からの大阪のおばちゃんスタイル先回り。これで10代にして無双。どや?」
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