5/25 退屈なキャンドル

「で、最近どうよ?」

「まーぼちぼちかな。昨日は久々にフルフルで燃えてきたわ」

「へえ、どこの現場だったの?」

「誕生会、誕生会、誕生会、結婚式、結婚式の二次会、ピアノの発表会の保護者会、ゴルフの打ち上げ、コンカフェ、ホスクラ、からの個人かな」

「めっちゃ働いてんじゃん。ヤバいね」

「……一応金のツイストロングなんで、希少価値でやらしてもらってます、って言ってもどこまでこれが続くか分からんよ」

「まあ、それはどこも同じでしょ? いいなー、派手な現場多くて。俺なんか地味だよ」

「えー? いーじゃん堅実が一番だよ。たぶん若い子にスマホで撮りまくられていーなーってことでしょ? 確かにそういう局面は多いけど、あの子達すぐに飽きるから。もう捨てられないようにこっちは生き残るのに必死」

「でも最近韓国に市場拡がってるんでしょ?」

「違う違うお客がそっちに移っただけ! 母数は変わってない。むしろパクられてコピー作られる分パイは減ってんの! てか俺ら位の歳になるとキャーキャーが逆にしんどいとかない? 特にシャンパン被った翌日とか、先っちょ切られてふきんで拭かれはするんだけど酒残ってんだよね」

「……実感ないからよく分からんけど、二日酔いで頭に響くってこと?」

「まーそうだよね。そっちの場合はあれだっけ? お茶? 治安良いからいいよね。暴れる奴ってまずいないでしょ。いいなー」

「……たまにいるよ。俺日本酒掛けられたことあるもん。もみ合った末にこぼれた日本酒が仏壇にザーって」

「マジ!? きついねそれはー。あ、でもそれ滅多にないでしょ?」

「確かに俺が経験したのは一回だけだけどさ、俺の現場は逃れられないルーチンがきついわけよ」

「……あー」

「何が言いたいか、分かるでしょ? 言葉ですらない呪文だから、あれ。もう一万回位聞いたけど、俺、未だにあの呪文の意味が分かんない。ここまで来ると退屈とか睡魔とか通り越してもはや不気味だよね。あれ聞いてる位ならホストのシャンコ聞いてた方がまだましだよ」

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