幕間 魔族淫魔ジジ
ジジはまだ王都を彷徨っていた。
計画はほとんど成功していた。
クリス王子は卒業パーティの舞台で、婚約破棄と断罪をするのだ。
そして、その後、愚行を繰り返す筈だった。
穏健派のラフォルス公爵と亀裂が入り、内通者が人々をあおり、王宮を占拠し、隣国アルモンド帝国の兵を招き入れ国を潰す。
三つも国が潰れれば、魔族と人との仲は亀裂が入るだろう。
自分の地位も上がるだろう。魔軍も思いのままになるだろう。
しかし、ジジの命令に従って王子をそそのかす筈のスライムが、野に返ったように居なくなった。
「くそ、あのバカは何処に行ったんだ」
人を食ったスライムが、食ったその人に姿を似せるのを見て、使えるかと調伏した。
召喚した異界の人間を食わせれば、さらに能力が上がった。
これは使える。あまり動き回れない自分に代わってこれを使おう。
スライムは人に化け、魅了を維持し、命令を伝えた。あまりにうまく行って笑いが止まらない。
三つめも上手く行く筈だった。なのに──。
腹が立つ。クリスティアン王子は魅了にかかりにくい。
散々手こずらせて、わざわざジジが魔領から出て魅了をかけたのに、どういう訳か肝心な時に魅了が解けて、スライムは反応しなくなった。
せっかくここまでお膳立てしたのに、このままでは無駄になる。
ジジは焦っていたけれど、王子が公爵家に行くのはチャンスでもあった。クロチルドを使って、王子をもう一度魅了し、ラフォルス公爵と殺し合いをさせればいい。
なのに、また失敗した。アイツさえ居なければ、この国は──。
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