★短編★ 恋人の手前でその向こう

薄明 黎

恋人の手前でその向こう

恋人の手前でその向こう (前編)

「ねぇ、今回はどこ行く?」


「うーん、前はお前の買い物付き合ったし、今回はカラオケでも行くか」


「おっ、いいね」


 日も上がりきっていない日曜日の駅前を並んで歩く美男美女、花澤はなさわ勇樹ゆうき秋葉はきは紅葉もみじ


 恋人同士だと間違われてもおかしくないほど、仲睦まじく歩いて数分、一度コンビニに入ってはレジ袋に何かを入れて出てくる。そして元のルートにもどり、お目当てのカラオケ店を目指す。

 

 仲睦まじそうな光景をよく見れるため、『二人は恋人同士である』ということでクラス内(当事者二人を除く)での共通認識になっていた。幸か不幸か本人たちの耳には入っていないのだが、、


 勇樹は、学校ではクール系イケメンで、女子からの人気がすごいことになっている。

 実際のところ、人見知りとちょっとしたコミュ障がまじりあっているだけなのだが、、


 紅葉の方は、誰にも分け隔てなく接していて、おとなしく優しいため、クラスの聖女と呼ばれている。

 まぁ、彼女に関してもコミュ障で距離感のつかみ方が分からないだけなのだが、、、


 そして、その二人で一緒に居る時、いつもとは異なった態度になることや、よく二人きりで出かけることが多く。結果としてあのような認識になった。

 そのおかげというか、いや、そのせいで二人とも告白されるようなことは過去にも未来にもなく。お互いをそこまで異性として意識することはなかったそうなのだが、、

 

 二人が店に着くと、慣れた動きでフリータイム+ドリンクバーを頼み、個室へ入っていく


「よっしゃー、歌うぞー」


「最初どっちが歌う?」


「一緒に歌わない?これ歌えるでしょ?」


「おう、じゃあ歌うか」


 備え付けのタブレット端末を指さしながら聞く紅葉にマイクを渡すと、自分もマイクを握り歌いだした。


 ――――――――――


「いや、百点むずいな」


「何それ、イヤミですか?ここ来てから約二時間、いまだに九十点すら取れてない私へのイヤミですか?」


「いや、ごめんて」


 あれから、お互いに順番で歌ったり、二人でデュエットしてみたりと、カラオケを全力で楽しんでいた二人は今、コンビニで各々が買ったおにぎりやサンドウィッチなどをほおばっていた。

 『おい!持ち込みしてんのか?』と突っ込まれる前に言っておくが、しっかり持ち込みOKのところを選んでいる。


「そのパン一口頂戴」


「いいけど、良識の範囲でな」


「善処する」


 そう言いながら勇樹の買った菓子パンにかじりつく紅葉。


「ちょ、おい!おまえ」


「いいじゃん、勇樹のケチ」


 そう言って、堂々と間接キスをしているのだが二人は一切気にする様子もない、それどころか食べた量で言い争っている。

 学校でもこんなんだからあんな噂が立つのだと思うのだが、、


 昼食をとり終わると、先ほどと同じようにマイクを片手にデンモクをいじりだす紅葉。


「あ、そうだ!なんか好きな数字言って」


「じゃあ、7」


「もう一個」


「うーん、2」


 そうやって出てきた数字を自分の適当に思いついた数字に挟みながら、デンモクに打ち込んでいく紅葉。一方、勇樹は何をしているのか分かっていない様子でスマホをいじっていた。

 

「よしできた、ほら勇樹歌うよ!」


「了解、、、って、この歌なに?」


 スマホを机の上に置いた勇樹が画面を見るとそこには聞き覚えのない曲名が出ていて、少し昭和じみたイントロが流れ始まっていた。


「いや~、なんか数字で曲入れれるって機能あったから、適当に入れてみた」


『テヘッ』とでも言いたげな紅葉に、なぜ数字を聞かれたかの理由がわかった勇樹はもうヤケクソで、歌い始めた。


「「~~~~~♪~~~~~」」


「いやー、最後までわけわからなかったね」


「そらそうだろ、聞いた事ねぇし」


 曲名すら初めて聞いた曲をわけのわからないまま歌った二人は、ソファに腰掛けながら『60.820』と映し出された採点を眺めていた。


 ―――――――――――


 あの後、二人はひたすら歌い続け、気付けば時刻は6時をまわっていた。


「そろそろ出るか?」


「そうだね、これ明日声出ないかもね」


「同感、、あ、明日音楽、実技テストだ」


「あ、ほんとだ、ヤッバ」


 そう言いながらも二人は笑っていた、そのまま料金を支払い外へ出た。


「うぅ、さぶ」


「確かに、なんか肌寒いな」


 時期はすでに秋も後半戦、昼と夜の寒暖差が大きいので、半袖で来ていた紅葉は体を震わせていた。


「これ、羽織っとけよ」


 それに見かねた勇樹は自分の着ていたカーディガンを紅葉の肩にかける。


「え、いいの?なんか後から請求しない?」


「しねぇよ、俺をなんだと思ってるんだ」


「うーん、人見知りコミュ障野郎」


「てめぇ、やっぱ返せよ」


「やーだね」


 薄暗い空の下、街明かりに照らされながら駅までの道を、その街明かりに負けないぐらいの明るさで二人は歩く。

 誰がどう見てもお似合いなのに、この関係は恋じゃないらしい。


~~~~~~~~~


何気に初めての短編小説です。

比較的ダラァっと書いているのでダラァとよんでください。


長編の方も読んでいただけたらなぁ、、

なんつって、、


今後とも僕の作品のよろしくお願いします。



 

 




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