ランジェリー・ファンタジー

パイ吉

第1話お客様第一号①

 ハルトは椅子に腰かけ、満足気に店内を見渡していた。田舎町の小さな防具屋、この日がオープン初日である。

(やっとこの日が来た。師匠のとこから独立して開店した俺の店。初日から大繁盛ってなわけにはいかないだろうが、地道に頑張って常連客を獲得していこう!)

 ハルトが椅子から立ち上がり、店内に並べられた甲冑を丁寧に磨き始める。


 店の扉が開き、1人の女性が入って来た。

「いらっしゃい」

 ハルトが声をかけると、女性は軽く会釈した。

 彼女は細身の体に似つかわしくない大剣を背負い、軽装備の防具を身に着けている。背中まで伸びるキラキラと光る金髪をポニーテールにし、端整な顔立ちの中にまだどことなく幼さを感じさせる女性は、店内をゆっくり歩きながら防具をじっくり見て回った。

「その防具はお客さん向きじゃないよ」

 最軽量の鎧の前で立ち止まり、じっと見つめる金髪女剣士にハルトが声をかける。

「軽くて動きやすい防具が欲しいの。この店で一番軽いのってこれでしょ?」

「お客さん、ソロの初級冒険者だろ?」

「えっ、なんでわかったの?」

 金髪女剣士が驚いて目を丸くする。

「装備見れば分かるよ。それ以上軽量化したいのなら、武器を片手用の剣に替えて盾を装備しないと」

「それは絶対ダメ! この剣はお父さんの……」

 金髪女剣士は一瞬声を荒げたが、寂しげな顔で声を詰まらせた。

「まあ、事情は人それぞれだから強制はしないが、今の装備より強度を下げることは勧められないな」

「分かった」

 金髪女剣士はうつむいたまま、店の扉に向かって歩き始めた。

「防具を着けてないときは十分動けるのに、いざフル装備で実戦となると思うように動けないってことだろ?」

 勢いよく振り向いた金髪女剣士が、驚きの顔で首を縦に振る。

「そうなんだ。防具が重くて思ったように動けない。剣捌きにもキレが無くて、スキルすらまともに使えないんだ……」

「ちょっとこれ、外させてもらうよ」

 ハルトが歩み寄り、金髪女剣士の装備を外していく。

「ちょ、何するんだ! や、やめろ」

 

 防具を外すと、それまで隠れていた豊満な胸の膨らみがあらわとなった。着衣の上からでもはっきりとわかる巨大な乳房。金髪女剣士は両手で隠すように胸を抱え、真っ赤な顔でハルトをにらんだ。


「実戦で動けないのは防具のせいじゃない。原因はそれだ!」

 ハルトが金髪女剣士の巨乳を指さし、キッパリと言い切る。

「分かってるわよっ。でも仕方ないでしょ! 好きで大きな胸に生まれたわけじゃないんだから。同期にバカにされて、防具屋にまで嫌味言われて、男なんて大っ嫌い!」

 金髪巨乳剣士が目に涙を浮かべてまくしたてる。

「いや、俺は胸が原因とは一言も言ってないぞ」

「へっ? だって私の胸を指さして言ったじゃない」

「原因はアンタの着けてる下着だ。戦闘用ブラじゃないうえ、そもそもサイズすら合ってない」

「えっ? 戦闘用ブラ? サイズ?」

 ハルトから放たれた想定外の言葉に、金髪巨乳剣士は思考が追いつかずに口をポカーンと開いた。

 

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