いまさらですが幼馴染との恋の発展ってむずくね⁉︎

猫の集会

プロポーズ

 カランカラン

 

 夜景のみえる少しオシャレなバーで、オレと幼馴染の菜美華なみかは、お酒を楽しんでいた。

 

 菜美華がカランカランとカクテルをさくらんぼで優しく混ぜる。

 

 昔からピアノを習っていた菜美華の指は、白くて細くて美しい。

 

 そんなきれいな手の菜美華は、容姿もかなり美しい。

 

 幼い頃から色んな人に何度も告白されていた。

 

 でも、どんなイケメンが告ろうとも全く動じずお断りの嵐だった。

 

 その度にオレはドキドキハラハラしていたが、歳を重ねるごとにドキドキする心配もなくなった。

 

 なぜなら、菜美華は恋愛に興味がないのだろう。

 

 オレはそう思っていた。

 

 何十年も。

 そして、毎年菜美華の誕生日は二人でお祝いをしているから、男っ気がないのも丸わかりなのだ。

 

 だから、これからもずっとオレが隣でお祝いしようと思う。

 

 なのに、菜美華ときたらいきなり

「ねぇ、そうすけ…もうわたし達ハタチもとっくに過ぎたしさぁ、そろそろ解散しない?」

 なんて言い出した。

 

 はぁーっ⁇

 解散って…

 コンビじゃねーし。

 と思いながらも内心ドキドキ手汗ダラダラだった。

 

「えっ、なんで⁉︎何でだよ⁉︎」

 オレは静かなバーで思わず声を張り上げてしまった。

 

 すぐにハッと我にかえり、周りのみなさんに頭をぺこりとさげて静かに席に座りなおした。

 

 そして、声のトーンを戻し

「解散ってなに?」

 と聞き直した。

 

 すると、カラカラカクテルを混ぜながら

「だーからー、解散」

 とまた言った。

 

 はぁ…

 

 これは困った。

 

 まさか、ついに菜美華に運命の人が現れてしまったのかもしれない。

 

「なぁ、菜美華」

「ん?」

「解散…しなくてもさ、ほらオレたち幼馴染なんだし…そのー、なんかあったときは相談相手にもなるから、だからオレを相談窓口だと思ってその…」

 と言いかけると菜美華は、

「相談窓口ねー。」

 と言いながらカクテルを一口飲んだ。

 

 そして…

 

「ならさ、早速相談にのってよ」

 と菜美華は、オレをじっとみた。

 

「えっ…、う、うん…」

 

 おいおい、相談ってまさか婚約者がいるんだけどとかそういうんじゃないだろうな…

 

 でも、オレとの幼馴染を解消したいってことは、きっとパートナーに心配をかけないようにしたいって事なんだよな…?

 

 たしかに、いくら幼馴染だからってやっぱりオレも同じ立場だったら、彼女に男性の幼馴染がいて、よく連絡を取りあっていたら少しイヤかもしれない。

 

 仕方ない…

 意を決して相談にのろう‼︎

 

「で、相談って?」

 オレは、内心ドキドキだったけど平常心を装い落ち着いた感じで聞いてみた。

 

 するとまさかの、

「いまさ、好きな人がいてプロポーズ待ちなんだ」

 と言い出した…

 

 ああああああぁあああああぁ…

 

 やっぱりか‼︎

 やっぱりだよ‼︎

 

 予想的中…

 

 もう脳内が崩れ落ちている…

 オレの脳内からどんどん全てが溶け落ちているんじゃないかってくらい思考停止だ。

 

 あー…

 

 男っ気がなかったあの菜美華を落としたのはどこのどいつなんだ…

 

 オレが安心しきっている間にその男は、いつのまに菜美華の心に入り込んだんだ‼︎

 

 

「で、そのプロポーズ待ちって人とはいつ知り合ったの?」

「あー、最近…だったりじゃなかったり?」

 なんてあいまいなことを言い出す菜美華。

 

 なんだよそれ…

 

 いつかわからない間に恋に落ちたってことかよー…。

 

 今までどんなイケメンにもなびかなかった菜美華を落とした男は、どこのどいつなんですかー‼︎

 

 会社の方ですかー⁉︎

 それとも、隣人ですかー⁉︎

 一体だれなんですかーー‼︎

 と脳内で取り乱した。

 

 こんなことなら、ダメ元で菜美華に思いを伝えておけばよかったよ…。

 

「プロポーズ待ちってことは…かなり進展してるんだな…」

「えっ、どうかなぁ。てかさ、相談窓口なんだよね?」

 と菜美華に言われて我に返った。

 

「あっ、あぁ、そうだったな。えと…プロポーズされたいんだよな?うん。大丈夫‼︎菜美華は、充分魅力的だから待っとけばすぐにプロポーズされるよ!」

 というと、

「うーん…、それがなかなかしてくれなくてさー」

 と、夜景に視線を落とす菜美華。

 

 菜美華ー…、どんだけそいつ好きなんだよー…。

 

「その人ってさ、イケメンだったりする?」

「え、うん。」

 

 即答する菜美華。

 

 …

 

「その人って優しい?」

「うん!」

 

 …嬉しそうにこたえる菜美華…

 

 はぁ…

 

 イケメンで優しいのかよ…

 

「年収は?」

「うーん、普通かな?」

 

 そこは、普通か…

 

「なるほどー」

 

 …

 

「てか、全然相談窓口じゃなくない?」

 

 …

 

 もう終わった…

 

 オレは相談窓口にすらなれない。

 これでもう幼馴染解散決定だ。

 

 

 仕方ない…

 幼馴染だからって、ずっと一緒にいれるなんてそんな法律ないんだ。

 

「菜美華…」

「なに?」

「帰ろっか」

 

 …

 

 しばらく沈黙のあと菜美華がうなずいた。

 

 沈黙の意味は、きっと…きっと少しでもオレと離れるのが寂しいと思ってくれたに違いない。

 

 それだけで、もう充分だ。

 

 

 

 まだ終電もあるし、菜美華は電車で帰ると明るく答えた。

 

 さらには…

 

 これから彼が迎えに来るからって。

 

 …

 

 あぁ、そうだよな。

 菜美華には、もうオレとじゃないパートナーがいるんだから。

 

 くっそー‼︎

 菜美華ーー‼︎

 幸せになれよーー‼︎

 

 

 菜美華と別れてオレは携帯を握りしめた。

 

 もう…

 もう菜美華と連絡をとることもないんだ…

 

 

 

 と思っていたら携帯に菜美華から

 

 〇〇公園に迎えに来て

 

 と入ってきた。

 

 ?

 

 菜美華ー…

 

 幼馴染と未来の旦那さん間違えてるよー…

 

 オレは仕方なく菜美華に送る相手間違えてるよと送った。

 

 でも、返事が来ない…

 

 まさか、送ったつもりでもう携帯バックにしまい込んでる可能性が高い。

 

 

 仕方なく直接伝えに行くことにした。

 

 最後がこんなのってありかよ…

 

 幼馴染のオレと彼氏間違えてるよって伝えるのが最後って…

 

 なんだよ…

 

 幼馴染ってなんなんだよ…

 

 はぁ…

 

 

 

 夜の静かな公園のベンチにあかりがともされていた。

 

 そのベンチの下に菜美華が座っていた。

 

「菜美華ー…」

 オレはこれが菜美華をみる最後の姿なんだと思ったら、なんだか目がうるんだ。

 

 夜だから暗くてよかったぜ…

 

 

「なあ、菜美華…幸せになれよ」

 とオレがいうと菜美華は、

「うん。幸せにして?」

 なんて返事してきた。

 

 え?

 

「菜美華、オレだよ?暗くて見えないかもだけど、さっき菜美華が迎えに来てって送ったのプロポーズ待ちの人じゃなくて幼馴染のオレの方に送ってっから」

 と伝えると、菜美華はオレに抱きつき

 

「うん。知ってる」

 と言った。

 

 …え?

 

 はっ⁉︎

 

 もしかして菜美華…

 まさか…

 

 まさか⁉︎

 菜美華は、まさかずっと…

 

 

 

 オレは菜美華を見つめて言った。

 

「菜美華、結婚してください‼︎」

 と。

 

 すると菜美華は、

「やっと言ってくれたね」

 とニッコリした。

 

 あぁ、菜美華はずっとオレを待っていてくれたのか。

 

「菜美華、ずっと待たせてたんだね。ごめんな」

 というと、

「ほんとだよ!待たせ過ぎ」

 とオレを軽く睨んだ。

 

 マジか…

 ずっと両思いだったのかよ。

 

 

「ごめん。これで機嫌なおして」

 とオレは菜美華にキスをした。

 ずいぶん長く一緒にいたけど、初めて触れた唇。

 

 あぁ、菜美華の唇は薄くてきれいだと思っていたけど、意外とプニんとしていてあたたかい。

 

「菜美華、愛してる」

「うん。わたしも愛してるよ」

 

 何年も待たせた分、長く甘〜いキスをした。

 

 抱き合いキスを何度も交わした。

 

 今までの時間を取り戻すかのようにずーっとずーっとね♡

 

 

 

 おしまい。

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いまさらですが幼馴染との恋の発展ってむずくね⁉︎ 猫の集会 @2066-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ