第26話

 夫は塀の中で感謝を伝え、歪んだ顔のそれと握手をする。法則に従いそれは消滅した。触れたのは自分自身と全く同じ手であった。

 少年2人は結局真実を打ち明けず、罪を隠して生き続けた。その後の事は分からない。何事もなかったように暮らしているかもしれない。また誰かを殺して、嘘をついて逃げているかもしれない。彼らを本当に咎めることも救うことも、できるのはAと、夫だけだったが、何もしないという選択を取った。夫婦は気づいていないようだが、それが少年2人にとって一番残酷な決断だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る