第20話

 夫はどうにかAだけでも釈放してもらおうと、正直に自分の少年たちへの殺意が神経伝達物質にあり、それが加速器にかけられて、ヒッグス粒子という形で現れ、人を襲っているのかもしれないと警察に話した。話が理解されなかったことは言うまでもない。警察は加速器の実験施設にも捜査の手を伸ばしたが、研究者たちの話もまるでわからない。そのヒッグスなんとかに意志があっても、目に見えないほどの小ささで一体何ができるというのだと、その場に来ていたあの警部補が問いただす。本来、ヒッグス粒子は衝突後、すぐに崩壊し、別の粒子という形に変化するか消滅するが、研究者の中にはなくなったヒッグス粒子は異次元へ移動したと考えているものもいる。異次元の世界では大きいか小さいかなんて取るに足らないことですよ、そう研究者の一人が警部補に説明した。

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