幼馴染を犯すエロ小説を書いていた幼馴染と一緒に暮らしています
黒野マル
1話 俺(私)には好きな人がいる
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俺には好きな人がいる。
あいつの名前は
あいつとは昔から同じマンションに住んでいて、家族ぐるみで仲が良かったから顔を合わせる機会もとにかく多かった。
同じ幼稚園に入った時から俺はずっとあいつのことが好きだったし、その報われない片思いは高校までずっと続いた。でも、告白しようとは一度も思わなかった。
その理由は、あいつの人気が半端なかったからだ。
『ねぇねぇ、聞いた?夏目さん、3年の
『えっ、あのサッカー部のエースの!?うそでしょ!?』
『いやいや、そんなわけないじゃん。なんか怪しいんだよね~~本人は彼氏ないと言ってるけど』
『好きな人とかいるんじゃないの~?』
『まさか~~』
異質的な銀色の髪と瞳。まるで、ラノベの中に出てくるような綺麗な見た目をしているせいか、とにかくあいつの周りには男が多かった。
それに、その人気にはヤツのすがすがしい性格も一役を果たしていた。黙っていると清楚だけど口を開いたら気軽に接してくるんだから、そのギャップにやられるやつら多かったのだろう。
でも、あいつはとにかく口汚くて乱暴で、女の子らしいというところなんて皆無なヤツだった。その素の性格は、主に俺にしか適用されなかったけど……。
『やだぁ~~宿題やってよ!!お願い、お願いだから!!』
『だからなんで俺がお前の分までやらなきゃならねーんだよ!!』
『いいじゃん!あんた私の幼馴染でしょ!?10年以上も幼馴染やってるんだからこれくらいはしてくれてもいいじゃん!!』
『せめて書き写しでもしろよ……!俺はお前の執事ねーんだぞ!?』
『はっ、あんたの顔と性格で執事とかマジで無理なんですけど~』
『こんの…………………!』
という感じで、とにかく放課後に一緒にいることは多かったけど、俺とあいつの間で恋愛的な雰囲気が流れることは一切なかった。ただただ、俺が一人で片思いをしているだけだった。
俺は、とにかく陰キャで注目されるのが好きじゃなかったから。クラスの中でもせいぜい中の中か中の下のポジションで、学校のアイドル的存在だったあいつと付き合うなんて、夢のまた夢の話だった。
だから、気持ちを押し殺した。自分に自信もなかったし、せめてこの関係だけでも維持したかったから。そして、願い通りに俺たちの関係は崩れることなく、終わりを迎えた。
『…………ねぇ、白』
『うん?どうした』
『その………………………えっと』
『……………なんだよ』
『……………………ふぅ。いや、やっぱなんでもないや』
『は?』
『……バイバイ』
……卒業式の日。
もしあの時、寂しそうにしていたあいつの手を掴んでたら、少しはなにかが変わっただろうか。
いや、そんなわけがない。俺たちの大学はあまりにも遠く離れていたし、何かをしようとしてももう遅いとしか思わなかった。でもあの日、俺は部屋に閉じこもって過去一に泣き崩れていた。
初恋はそんな風に自然消滅し、俺は晴れて大学生になった。大学に入ってからは自分の性格を変えようと思い、前より人間関係に気を配って、自己管理もするようになっていた。
その結果、異性から告白されることもしばしばあったけど……どうしてか。
『………ごめん。俺、まだ誰とも付き合う気がなくて』
終わったと思っていた初恋が、ねばねばと大学生の俺の心にまでへばりついてきて。
結局、俺は見事に年齢=童貞というトロフィーを手に持ったまま社会人になった。そして、やっぱり俺に恋愛はムリだと半分諦めていたところで。
まるで運命かのように、あいつがまた俺の目の前に現れたのだ。
「……………………………………」
日差しが暖かい春の日。
キャリーバッグを引いてマンションの入り口に着くと、遠くから俺と同じくキャリーバッグを引いているあいつの姿が見えてくる。
高校の時より少しだけ長くなった銀色の髪の毛。相変わらず真っ白な肌と目に、白いワンピース。
あの頃よりもっと綺麗になって、もっと大人になったあいつはぴたりと、俺の前で足を止めてから手を振ってくる。
今日から、俺はこいつと同じ家で住むことになる。
「………よ」
「………よ」
俺の初恋は呪いに近い。
終わらせようと思ったのに、どうしても終わってはくれないのだから。
<夏目 唯花>
私には好きな人がいる。
あいつの名前は桑上奈白。物心ついた時からずっと一緒だったのに、一度も私に告白してくれなかった根暗クソオタク童貞野郎でもある。
あいつとは幼稚園の頃からずっと一緒だった。同じ幼稚園に同じ小学校。中学、高校も一緒で家もすぐ隣だから、たぶん家族を除いては一番よく会っていた相手なんじゃないかと思う。
そう、あいつと私はいわゆる幼馴染なのだ。
『あのさ、あんたは彼女作らないの?』
『……………なんでそんなこと聞くんだ?』
『別に~?今日、友達から恋愛相談されてさ。ふと気になっちゃって』
『………作らねーよ。というより、お前は作らないのかよ』
『私?なんで?』
『なんでって、桐山先輩に告られたんだろ?なんで振ったんだよ、あの人めちゃくちゃ評判いいのに』
『…………………………っ』
……………あんた、それわざと聞いてんの!?あんたのせいでしょ、あんたの!!!このくそ童貞が……!!
と、心の中で何度も悪態を吐いてたのを今更ながら思い出す。
本当に、あの鈍感男にはどれだけ悩まされたんだか。私なりに好き好きってアピールしても全部ウザいとしか言わないし、一緒の大学に行こうとしても勝手にいい大学に行ってしまうし、卒業式には大学に行った後も会いたいと言いたかったのに、勝手に話を断ち切るし………本当、人類史上最悪な男だと思う。マジで無理。
『っ………ぐっ……ぅう……バカぁ………忘れて、絶対に忘れてやるんだから……!もう大嫌いだよ、あんたなんか……!』
卒業式の夜にはもう枕がじめじめするくらい泣いて、私は新たな目標を掲げた。大学に入ったらちゃんと彼氏を作って、私を見逃したあいつを見返してやるって。
……でも、思い通りにはいかなかった。
『……あいつ、なにしてるんだろ』
コンパとか飲み会に出ても私の心はずっとあいつに縛られていたし、他の男を見てもあいつに感じた好きの100分の一も湧かなかった。むしろ男たちがしつこく絡んでくるせいで高校の時より人を避けるようになったし、部屋に閉じこもってあいつへの妄想を膨らませることしかできなくなっていた。
その結果、私は膨らみ切ったその妄想を小説で処理しようとしていた。
とにかくあいつにまつわるこの感情を吐き出したくて、講義もろくに受けずに夜な夜な小説を書き続けていたのだ。そしたらいつの間にか、私は幼馴染ものの専門作家として有名になっていて………だから、私は感謝するべきかもしれない。
そう、目の前にいる、この大嫌いな男に。
「………っ」
高校の時とは違って少し長めの黒茶色の髪に、同じ色の瞳。
筋トレでもしてるのか、かなり広くなった肩幅とあの時より鋭くなった目つきが私を捉える。心臓が勝手に鳴り出す。
あの時よりもっとかっこよくなって、もっと私好みの印象になったあいつは私を見た途端に目を見開く。今日から私は、この男と同じ屋根の下で暮らすことになる。
気まずくなるのが嫌で、私は先に手を振った。
「……よ」
「……よ」
私の初恋は呪いだ。
まさか、この年になってからも幼稚園の時の初恋を引きずることになるなんて、思いもしなかった。
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