オバカマ

菜乃花 月

オバカマ

【登場人物】

オバサン:平和に暮らすオバサン。可愛げのある年下男性が好き。

本名 佐藤 正子(さとう まさこ)

オカマ:平和に暮らすオカマ。ガチムチ年上男性が好き。

本名 鷹崎 堅斗(たかさき けんと)


オバサンとオカマが平和に喋るだけの15分


ー本編ー


オバサン:「あら、ケンちゃん」


オカマ:「あらぁ、正子さんどうも。元気?」


オバサン:「あたしは見ての通りピンピンしてるよ。ケンちゃんも元気そうねぇ」


オカマ:「おかげさまで元気よ」


オバサン:「そういや聞いたかい。昨日ここら辺で全裸で歩いてる男がいたそうだよ。最近暖かくなったからねぇ。もう春が来たかって感じよねぇ」


オカマ:「やだ、その男ガチムチかしら。だったらワタシの元に現れてくれると喜んじゃうわ」


オバサン:「何言ってんだい、妖怪みたいな顔してるあんたの前に現れる物好きはいないよ」


オカマ:「誰が妖怪ですって?」


オバサン:「おや、鏡で自分の姿見たことないのかい。なら今すぐ見ることをおすすめするよ」


オカマ:「ワタシは今日も完璧よ、失礼なババアね」


オバサン:「誰がババアだい」


オカマ:「あんたよ。あんたしかいないでしょ」


オバサン:「こんなにプリティなあたしをババア扱いとはいい度胸だねえ」


オカマ:「事実でしょ」


オバサン:「あたしはね、永遠の17歳だよ!フォーエバーセブンティーンだよ!」


オカマ:「うっっっわぁ、イタイ、イタすぎるわ。全身鳥肌が立ったわ」


オバサン:「おや、化け物はもともと鳥肌じゃないのかい。それは初耳だ」


オカマ:「その豆粒みたいに小さい頭を捻り潰されたいのかしら」


オバサン:「あたしはね、可愛い年下男子に看取られるって決めてるからね。あんたみたいな可愛げもない化け物に殺されるのはごめんだよ」


オカマ:「相変わらず年下男子が好きなのねぇ。ただのババアに優しくする年下男子は詐欺よ詐欺。全員詐欺に決まってるでしょ目を覚ましなさい」


オバサン:「年上ガチムチが好きなあんたにだけは言われたくないね。ガチムチのどこがいいんだか。あんなのただの筋肉ダルマだろ」


オカマ:「まぁ!ガチムチの良さをわからないなんてかわいそうなババアね。人生の9割損してるわよ」


オバサン:「そんなわけないだろ」


オカマ:「いい?服を着ててもわかる筋肉のゴツゴツ感、特にTシャツを着てあんたそれサイズあってないでしょってくらいパッツパツなのがいいのよ。そして脱いだら出てくる鍛え上げられた身体を想像してごらんなさい!もう最高すぎて濡れちゃうでしょ!やっぱり王道の大胸筋や大腿四頭筋は外せないわ」


オバサン:「はいはい、そうかい」


オカマ:「顔は爽やかなくせに身体がムッチムチなのは100点ね!そういう人の夜はきっと激しいのよ!あぁん早くその筋肉でワタシのことをきつく抱きしめてぇ!!ワタシを重りにしてベンチプレスしてぇ!!」


オバサン:「何言ってるんだい。気持ち悪いね」


オカマ:「はぁ?ババアのショタコンよりは気持ち悪くないわよ」


オバサン:「ショタコンじゃないよ!あたしが好きなのは10代後半から20代前半の色白年下男子だよ!「おばあさん、よければ荷物持ちますよ」って言って家まで運んでくれる系男子が好みなんだよおバカ!」


オカマ:「そんなドラマみたいなこと起きるわけないでしょ。今の子たちはスマホしか見てないわよ。ババアなんか見てないわよ」


オバサン:「ほんと目線が合わない子が増えたわねぇ。それでも、元気にランドセルを背負ってた子が気付いたら大学生とか社会人になってるのを見るが楽しいんだよ。あらまぁこんなに大きくなったのねぇってなるのはオバちゃんであるあたしの特権だよ」


オカマ:「(ぼそっと)妖怪見守りババア」


オバサン:「聞こえてるよ」


オカマ:「あらやだごめんなさい。耳が遠いと思ったわ」


オバサン:「いちいちうるさいねぇ。その口は筋肉と悪口以外言えないのかい」


オカマ:「ワタシの専門は甘い言葉よ。これで色んな男を落としてきたわ」


オバサン:「想像しただけで吐き気だね。甘い言葉ってのはいい声の人が言ってなんぼだよ」


オカマ:「あら、ババアとは一生価値観が合わないと思ったけど、そこは同意だわ。いい声って素敵よね」


オバサン:「素敵だねぇ。心が落ち着く低音からあざといふわふわした声まで十人十色。中には一人で色んな声を出せる人がいるだろ。ああいうのは素直にすごいと思うよ」


オカマ:「自分の好きな声が喋ってるだけで最高なのに、歌ったり演技したりするとまた雰囲気変わってずるいのよねぇ。あんた歌うと声低くなるのね好き!ってなるわ」


オバサン:「そうそう、ギャップ萌えってやつだね。最近はアイトって人が好きなんだよねぇ」


オカマ:「アイトってあの、一切顔出ししてないけど毎日雑談や歌枠などしてるあのアイト!?」


オバサン:「そうそうそのアイトだよ!知ってるのかい?」


オカマ:「知ってるも何もワタシも大好きよ。特に最近出した歌の再生数はほぼワタシと言っても過言じゃないくらい聞いてるわ」


オバサン:「わかる、わかるよ!あの曲いいよねぇ、シンプルな言葉で伝えるからあたしでも聞きやすいんだよ」


オカマ:「アイトはあの声だけど絶対身体は鍛えてるわよ。脱いだらすごいタイプ」


オバサン:「何言ってるんだいアイトは華奢な身体に決まってるでしょ。鍛えてるわけないよ」


オカマ:「自分の好みに染め上げてるだけじゃない。そういうのよくないわよ」


オバサン:「あんただってそうだろう。アイトは身体鍛えてるわけないね」


オカマ:「いいえ絶対鍛えてるわ。競輪選手並みの太ももしてるわよ」


オバサン:「それくらいなら競輪選手になるべきだよ。あの爽やかボイスがガチムチ?ないない」


オカマ:「はぁ、これだからババアはババアなのよ」


オバサン:「なんだって?」


オカマ:「声が爽やかだからって細身とは思わないでちょうだい。声が爽やかなほどガタイがよかったりするのよ」


オバサン:「そういうもんかねぇ」


オカマ:「そういうもんよ!」


オバサン:「まぁまぁ、アイトはお互いの理想でいいじゃないか。あたしは争うより語りたいね。アイトが好きな人に出会えたのは初めてなんだよ」


オカマ:「そうね、ワタシもアイトファンに出会えると思ってなかったから是非お話ししましょう」


オバサン:「ねねね、アイトの歌以外だったら何が好きだい」


オカマ:「んーやっぱりシチュボかしら」


オバサン:「あ~わかるわかる。アイトが誰に向けて言ってるのかを想像するのが楽しいわよねぇ」


オカマ:「は?何言ってるの、あの言葉は全部ワタシに向けられたものよ。アイトがワタシのためにおかえりとか言ってるに決まってるじゃない!」


オバサン:「アイトが化粧で塗り固めた怪奇現象におかえりって言うわけないだろ!」


オカマ:「とうとうワタシのこと怪奇現象扱いし始めたわね!!ワタシは人間よ!に・ん・げ・ん!!」


オバサン:「おぉそうかい、あんた人間っていうのかい」


オカマ:「腹立つババアね・・・。ババアは知らないと思うから教えてあげるけど、シチュボはアイトと聞く相手、つまり自身が同じ空間にいる設定なのよ。だからお疲れ様ボイスとかは間違いなくワタシに向けられたものなのよ!」


オバサン:「自分が入るなんでおこがましいじゃないか!アイトとまた別の人がいるって想像した方が何倍も楽しいでしょうが!」


オカマ:「意味わからない!アイトと自分以外なんて誰よその男ってなるでしょ!」


オバサン:「意味わからないのはそっちだよ!なんでお前のためにアイトがお疲れ様とか言うと思ってんだい!ちゃんちゃらおかしいよ!」


オカマ:「別にお疲れ様って言われるくらいいいじゃないの!他の誰かに言われるとこを想像して何が楽しいのよ!!」


オバサン:「あぁ、同じくらいの年の子に優しくしてるんだねいい子だねってなるでしょうが!オバさんは中に入るよりも外で見てるのが正解なんだよ!」


オカマ:「それはあんたがババアだからでしょう!!ワタシはまだそこまでの歳じゃないのよ!外から眺めずに積極的に中に入ってくタイプなの!!血眼で標的を狙うお年頃なのよ!」


オバサン:「獣に狙われるアイトがかわいそうだね」


オカマ:「常に乙女よ!!それにワタシは喰うより喰われたいのよ!いい男にはいくらでも身体を開くわ!!」


オバサン:「でかい声で何を言ってるんだい気持ち悪い」


オカマ:「吹っ掛けてきたのはババアの方でしょう」


オバサン:「あたしは事実を言っただけだよ」


オカマ:「事実じゃないわ。ただの煽りよ。あなたの意見が世界の正解みたいな言い方しないでちょうだい」


オバサン:「うるさいよ化け物」


オカマ:「うるさいわねドリームババア」


オバサン:「ドリームババアぁ?!」


オカマ:「夢しか見ないババア。つまりドリームババア。あなたにぴったりだと思うわよ。夢見てるうちにぽっくり死ぬのがお似合いよ」


オバサン:「まだ死ぬ予定はないよ!失礼だね!」


オカマ:「どうかしら」


0:オバサンの目線の先に人影が見える


オバサン:「ん?あれは誰だい?」


オカマ:「どれよ」


オバサン:「ほら、こっちに向かってくる人だよ」


オカマ:「んー?あ、確かに向かってきてるわね。男だわ」


オバサン:「知り合いかい?」


オカマ:「いいえ、ワタシは知らないと思うわ」


オバサン:「ずいぶんぴったりした服を着てるんだね」


オカマ:「えぇそうね。・・・いや待って」


オバサン:「どうした」


オカマ:「昨日近所で全裸男が目撃されたって言ってたわよね」


オバサン:「言ったわね」


オカマ:「その人って捕まったの?」


オバサン:「いや、捕まってないみたいだよ」


オカマ:「・・・なら、もしかして」


オバサン:「なんだい、向かってくる人が全裸だとでも言うのかい」


オカマ:「・・・たぶんね」


オバサン:「・・・本当かい」


オカマ:「えぇ」


オバサン:「・・・相手はどうだい、あんたのタイプかい」


オカマ:「いいえ、ワタシは筋肉の塊が好きなだけで脂肪の塊は好きじゃないわ」


オバサン:「そうかい。・・・ケンちゃん」


オカマ:「なぁに正子さん」


オバサン:「あの男を警察に突き出すのはどうだろう」


オカマ:「奇遇ね。ワタシも同じこと考えてたわ」


オバサン:「だったらやることは一つだね」


オカマ:「えぇ、そうね」


オバサン:「行けっ!ケンちゃん!」


オカマ:「お兄さあぁん、ワタシとお話しましょうぅ!」


~全裸男に向かって走り出すオカマ~

~慌てて逃げる全裸男~


オカマ:「待てやゴルラアアアァァ!!!!!粗末なもん見せつけてんじゃねぇぞおおぉ!!!」


~すごい速さで追いかけるオカマにすぐ捕まる全裸男~


オカマ:「正子さんっ!捕まえたわよ!本当に全裸だわ!」


オバサン:「あらまぁ、だらしない身体じゃないか。今警察呼んだからすぐ来ると思うよ」


オカマ:「ありがとう。ったく、気温が上がってきたからって開放的になりすぎよ!騒ぐんじゃないわようるさいわね!」


オバサン:「・・・ん?この声どこかで・・・」


オカマ:「あら、警察が来たみたいね。ほら、もう逃げられないわよ。おとなしく警察とおしゃべりしてきなさい」


~警察に連行される全裸男を眺める二人~


オカマ:「・・・一件落着ね」


オバサン:「そうだね」


オカマ:「・・・」


オバサン:「・・・」


オカマ:「・・・あの全裸男ってさ」


オバサン:「その先は言わないでちょうだい」


オカマ:「・・・そうね、信じたくないわ」


オバサン:「違う可能性だってあるでしょ」


オカマ:「違う可能性ねぇ・・・」


オバサン:「ま、捕まえた記念にカフェでケーキでも食べないかい」


オカマ:「いいわね、賛成よ」




オカマN:後日ワタシたちが逮捕した男はアイトだったことがわかり、ワタシたちはそっとお気に入り登録を外したのだ。




終わり

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