第19話エリックside


 イートン校(イートン・カレッジ)

 1440年に創設された英国の男子全寮制のパブリックスクール。イートン校の生徒は13歳から18歳までの少年が通います。1学年あたり250人ほどで、学費は年間約46000ポンドに達するそうです。


 注:イートン校の食事は豪華だと聞いた事があるので、この話では多国籍料理も多く出たという設定にしてます。なお、男子寮の人数設定は完全なオリジナル要素です。



 


 *****



 

「いい、エリック。あの馬鹿が通っていたのは我が国でも屈指の名門イートン校なの。しかも全寮制。協調性がない自己中バカロイドが何事もなく過ごせた――なんて本気で思ってないわよね?」


 綺麗に笑う姉御の目は全く笑っていなかった。

 ロイドは一体何をしたんだ?

 だが、姉御の様子からしてトンデモナイことなのは確かだ。

 当時、俺はアメリカにいたからな。物理的距離もあるがイートン校の噂なんて入ってこない。あれほどの名門校だ。醜聞ならトップを飾る事だろう。それがないと言う事は何らかの力が働いたということだろうか?

 本当に何があったんだ!?

 

 


「……学校でやらかしたと」


「アレを見てたら想像は付くでしょうけど、馬鹿は一週間も経たずに寮の部屋を一人部屋にしたわ」


「……はっ!?」


「名門校と言えども入学したての生徒に一人部屋なんてありえないわ。自主性と自立を養うだけでなく仲間同士の連携と協調を育む場所ですもの。低学年なら数人と相部屋になる事は何も珍しくないわ。でもね、その全員が逃げ出すほどの汚部屋に変えたのよ。あの馬鹿は。喘息持ちの生徒は病院に搬送されたわ。まあ、ゴキブリが湧いて出てくる部屋で生活なんてムリよね。生徒達が必死で片づけてもその都度汚していくんだもの。彼らが逃げ出したのも仕方ない事だわ」


「……」


「口の堅い業者に清掃をお願いしたみたいだけど、話はそう簡単には終わらなかったわ。それもそうよね。あの馬鹿とルームメイトなんて悪夢でしかないもの。学校側は緊急措置を取らざる負えなかったわ。ショックで倒れた生徒なんて馬鹿の顔を見るだけで過呼吸になるくらいにトラウマを植え付けられていたのだから当然よね。よくまあ、学校側が馬鹿を退学にしなかったものだわ。ある意味で感心する程にね」


 言葉の端端から皮肉を感じる。

 名門故のプライドの高さからロイドを切り捨てられなかったのか。それともロイドの才能と実家の寄付金に目が眩んだのか。はたまた両方か。なんだろう……両方のような気がする。名門校の闇深さを感じる。



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