第13話家政婦ロボットside
皆さま、初めまして。
わたくしは万能家政婦ロボット、ミス・マープルと申します。名前からお分かりになりますように、わたくしはかの有名な推理小説『ミス・マープル』の主人公であるジェーン・マープルから名付けられたのでございます。
開発者の一人が大層なアガサ・クリスティーのファンだったらしく、名付け親になる事を他者に譲らなかったそうです。
彼曰く「我が国が誇る名探偵はポワロとミス・マープルだ!」という事らしいのです。
他にも「我が国では何故かホームズがもてはやされているが、あんなものは論外だ。暇だと言ってアパートの壁をピストルで穴だらけにするヘビースモーカーの薬中男など犯罪者と大差ない。 それに比べて、ポアロは紳士で常識的、ミス・マープルは教養ある淑女。この二人こそ真の名探偵だ!」とのこと。シャーロキアンが聞けば烈火の如く怒り狂うセリフを悪意なく言い放っていたそうです。研究者の中にシャーロキアンがいなかったのは不幸中の幸いでした。
さて、この度わたくしは社長であるエリック・コーンウェル様の命により、ロイド・マクスタード様の身の回りのお世話を仰せつかったわけなのです。住み込み家政婦としての依頼を受ける形となりました。社長のエリック様からは「問題のある男ではあるが悪い奴ではない。ただ人よりも家事ができないだけなんだ」と事前に説明がございました。未だ試作段階の身でございます。膨大な知識はあれど実地は一切受けておりません。ですのでこれはわたくしにとっても良い実地訓練、もしくは研修期間だとも言えたのでございます。
わたくしの初のご主人様が住まうマンションに訪れた時には、
輝く金髪に宝石のような青い瞳。
絵本から飛び出したかのような
ただ、姉君のオリヴィア様から僅かに同情の色が伺えました事が少し引っかかりました。けれどそれはほんの僅かな色味でございましたので、恐らくは気のせいでしょうとスルーいたしました。こういう主人とその周りの方々に違和感を覚えた際には自己防衛をするようプログラムされているのでございます。これは主人の機密情報を他者に洩らさないと言う目的で組み込まれたものだと思われます。開発者がそこまで考えたかは不明ですけれども、わたくしはそうだと判断しております。
それと言うのも、家政婦という仕事は口が固くなくてはこなせない職業なのでございます。雇用主である家族のあれやこれや、表と裏。ドロドロとした人間関係やスキャンダルなどを常に抱え込むリスクが高いのです。それを承知した上で、家族の内側に入るわけですから。ですから秘密厳守が出来ない者は家政婦には向かないのです。ましてや、このわたくしは試作機でございます。どんなトラブルが起きるかも分かりません。ですから、その予防措置としては良いプログラムを組んでいると言えるでしょう。
オリヴィア様の同情の眼差し。
わたくしがソレを理解するには数週間の日数が必要だったのでございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます