第12話対策が必要だ
朝食は良い。
昼食も外で食べれば問題ない。
だが、夜はダメだ。
夜になれば帰宅するしかない。
そうなれば恐怖の食卓に座る選択しか与えられない。
『旦那様、好き嫌いはいけません』
あぁぁぁぁぁぁ!!!
違う!!
ミス・マープル、そうじゃない!!
俺に好き嫌いはないんだよ!!
その前にアレは好き嫌い以前の問題だろう!!
ゲテモノ料理は意外と上手いと言うけど……ミス・マープルの手料理は恐怖の物体以外の何物でもない。
俺が食べるのに躊躇していると塩や酢を持ってきて言うんだ。
『塩分の取り過ぎは体によくありませんが仕方ありません。これらの調味料をおかけください』
そうじゃないだろ!?
ソレ以前の問題だ!!
ミス・マープルは本物の人間と言っても差支えのない高性能ロボットだ。だけどまだ試作段階と言うだけあって喜怒哀楽が欠如している。早い話、表情筋が死んでいるんだ。
最初は嫌がらせの類かと思ったが真面目一辺倒な仕事ぶりを観察するにつれ、それはないと理解した。彼女は真面目に仕事に取り組んでいるだけだと。なら問題は他にある。あのグロテスクな恐怖の料理を調べたところ、間違いなく祖国の伝統料理だった。しかも国際的にも不味いと定評のある料理の数々。エリックに電話で問い合わせたら「社員の意見を取り入れて“ふるさとの味”をコンセプトに組み込んでいるんだ」と誇らしげに語っていた。
エリック、お前のところの社員の半数以上が外国籍を持つ人間ばかりだと言う事を忘れてないか?ただ単に社員は「自国の料理を他国でも食べたい」というだけじゃないのか!?
そもそも、うちの国の料理は粗食が多いって話じゃないか!!
あんな郷土料理を毎日食いたい人間なんかいないだろ!?
ふざけんな!!
俺は心の内で盛大にツッコむものの、口に出す事ができず悶々としたままミス・マープルが作った食事を口に運ぶのだ。そして一口でギブアップをする日々。
なにか手を打たねばならない。
このままでは、遠からず倒れる自信がある。俺の胃は繊細なんだ。
まずは籠城……ではなく、手軽に食べられるカップ麺を大量に購入した。
これでなんとかなるだろう。
後日、ミス・マープルにカップ麺の禁止を言い渡された。
やはり、カップ麺の夜食は体に悪いと判断されたんだろうか?
ミス・マープルは何も言わなかったから本当のところは分からない。だけど、近年健康食がブームになっているからミス・マープルも何らかの設定をされているに違いない。やたらと「栄養価」を言うのもそのせいだと踏んでいる。
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