第10話まともな朝食
朝がきた。
嫌でも日は登る。
≪旦那様、朝食の準備が出来上がりました≫
その言葉と共に恐怖の一日が始まった。
昨日の『星を見上げる魚達の晩餐』が脳裏から離れない。あんな物は二度と食いたくない。思い出しただけで吐き気がしてきた。
≪朝食は伝統的な“イングリッシュ・ブレックファスト”をお作り致しました。さあ、どうぞ召し上がってください≫
覚悟を決めてテーブルを見るとそこには普通の朝食メニューがあった。トーストにスクランブルエッグ、ベーコンやソーセージにマッシュルームなど多彩な品揃えでワンプレートに盛りつけられている。
「……これなら大丈夫……かも?」
俺は少しホッとして朝食に手を伸ばした。
パクリと一口。
うん!旨い!!
ベーコンがカリカリ過ぎる処を除けば完璧だ。
昨日の食事が散々だったから朝食はどんな恐ろしい物が出てくるかと思ったけど
朝食だけじゃなく、昼と夜の食事も
まともな食事に感動していた俺は知らなかった。
英国式スタイルの朝食は世界的にも人気で、世界の朝食ランキングの上位を占めている事を。
嘘か誠か、英国紳士のブラックジョークか。この国でまともな食事を食べるなら朝食だ、と言う言葉が一時言われた事を俺は知らなかった。
朝食を全て綺麗に食べ終え、俺は会社に出勤した。
昼食は近くの店でサンドイッチを購入してきて食べるのが最近の日課だ。午後からも頭をフル活用するため軽食にしている。が、やはり妻のお弁当が懐かしい。溜息をコーヒーで流し込み仕事に集中した。兄は「暫く休んだ方がいいのではないか」と言ってくれたが忙しく働いていた方がいい。気がまぎれる。休んでマンションに居ると嫌でも思い出すから。辛い。
何処の社畜かと思う程の仕事量をこなして、頭を常にフル回転させていたのがいけなかったのか。はたまた油断していたとしか言いようがない。朝食がまともだった事と仕事で忙殺していたせいでつい忘れていたのだ。昨日の昼食と夕食の件を。
仕事を終えて帰宅した俺を待っていたのは昨夜の再来だった。
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