第6話姉side
ホテルからのクレームに対処するため、私とエリックは急いでロイドを元のマンションに移動させた。一週間の間に業者に依頼して部屋が綺麗になっていたからこそできる事よね。
モデルルームさながらの室内を見て不機嫌そうにする弟は、やはりどこかズレているわ。そんなに他人が自分の領域内に入るのが嫌なのかしら?この感覚が今一よく分からない。変な処で拘るのよねぇ。本当に面倒な性格だわ。全く、我が弟ながらメンドクサイ男だとつくづく感じる。私は溜息を吐きながらリビングに置かれた椅子へ座る。対面には我が弟が座り、その横にはエリックが座っている。
「ロイド、ホテルから出禁を喰らった以上は観念して実家に戻るかここで暮らすかになるわ。ただ、あんたが一人で暮らせない事は重々承知しているから家政婦を十人体制で雇いましょう。勿論、住み込みで」
「嫌だ」
「嫌じゃないでしょ!あんた一人で生活なんて出来る訳がないでしょう!」
おもわず、声が大きくなってしまった。
私は咳払いして誤魔化す弟の方を見やる。ロイドは不満そうな顔をしたまま黙っていた。何だか反抗期の子供みたいね。ああ、でも昔からこんな感じだったわ。
「片付けも料理も出来なんだから仕方ないでしょ?」
「ヤダ!」
「……駄々っ子じゃあるまいし、わがまま言わないの」
「俺がどんな生活しようが勝手だろう!?」
「それが許されるのは五歳までよ。それに私はあんたがちゃんとした生活をできるとは思えないもの」
「失礼だな姉さんは。僕だってやれば――」
ロイドが何か言い掛けた時、横にいたエリックが突然口を開いた。
「あのさ……もし良かったらなんだけど俺の会社で試作中の家政婦ロボットを試してみないか?」
意外な提案が飛び込んできた。
ロイドは何を言われたのか分からない顔だ。目を大きく見開いている。これは「こいつ何言ってんだ?」とでも思っていそうだわ。誰のためにわざわざ提案してくれてると思っているの。唯一の友人くらい大事にしなさい。
「実は、家政婦ロボットは完成しているんだ」
「そうなの?もっと先になるのかと思っていたわ」
「まあ、試作中だから。売り出しするのは先になるよ。まだまだテストしないといけないし」
それもそうだわ。
何処かの会社のように機会が急に爆発したなんてことになったら目も当てられないもの。買うにしても富裕層向けでしょうしね。最初はどうしたって値段がモノをいうわ。いずれ一般向けに販売展開をするにしてもまだまだコスト面では無理があるでしょうしね。
「テスト実験に協力して貰える人間が居なくて困ってるんだよ。俺はロイドなら大丈夫だと思う。いやまぁ正直なところかなり不安だが……」
ちらっとロイドの方を見ると彼はキョトンとしていた。どう反応すればいいのか迷っているようだわ。気持ちは分かるわ。両方のね。
ロイドにしてみたらロボットの性能が何処までできるのかと完全面を考慮しているのだろうし、エリックにしても家事能力ゼロのロイドが満足するなら間違いなく売れると踏んでいるけれどそこには限りない不安も付きまとっている。主にロイド自身の諸々の問題が、と言って処かしら?
それに関しては私もエリックに同意見だから反論はしない。
まさかエリックがそんな事を言い出すとは思いもしなかったけど。まあ、あの子の性格を考えたらいい案かもしれないわ。一人にしておくと碌なことにならないもの。それならエリックの提案を受け入れるべきかしら。
「そのロボットは何が出来るんだ?」
「炊事に洗濯掃除。まあ、その他もろもろの家事全般ができる仕組みだ」
ロイドは意外にも興味津々みたい。人間じゃないからかしら?エリックも食いついてきたロイドに得意げに家政婦ロボットの性能を説明している。
この提案、やっぱり受けるべきかしら?
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