第3話保護者は姉
暫く待つとドアホンが鳴り誰かが入ってきた。軽やかな足音を立てながら現れた人物。それは、姉のオリヴィアだった。
「お邪魔するわよ」
俺の姿を見ると姉はにやりと意地悪く笑うとズカズカと部屋の中に入ってくる。遠慮という単語は姉の辞書にはないらしい。
「やっぱりこうなったのね。アンタって本当にバカ」
腕を組んで罵る姉の態度が鼻について仕方なかったけど文句は飲み込んでおく。だって今の状況は分が悪いし、姉に勝てる気が全くしないからだ。優秀な姉はこの国でも名の知れた大学に通い、卒業後は弁護士の道に進んだ。今は事務所を立ち上げている。国際弁護士として超優秀な女性だ。頭はキレるし、見た目も整っていてスタイルもいい。バリバリ仕事が出来る女の理想形だろう。そんな姉の一番の特技が「口」。論理的思考で相手を言い負かす術とでも言うべきだろうか。とにかく理論で敵をねじ込むのが昔から得意な姉だ。
弁護士という職業はまさに姉のためにあるようなものだろう。天職そのものだ。
姉を敵に回した弁護士と検察官は大抵泣いて白旗を上げる。
「とりあえずアンタ、シャワー浴びなさい」
「は?」
「臭いのよ。玄関に置いてある消臭スプレーを使わなかったみたいね。全体的に臭いけど、足が特に臭いわ。鼻が曲がりそうなくらいにね。だから近寄らないでちょうだい」
「……」
たった一人の弟に言うセリフじゃない。
もっと他に言い方があるだろ。革靴をはいてる人間の大半は足が臭いはずだ。俺だけじゃない。いや、その前に国の半分以上の男の足裏は臭い筈だ!
「何ぼさっとしてるの、さっさと行きなさい」
傷心中の弟を労わる気持ちはないのかな?でも姉に逆らうと後が怖いのを知っているので大人しく従った。なにしろ、口がまわるのと同じくらいに手と足が出るから。何度、鉄骨制裁を受けた事か……。
その後、何故か姉が用意してくれた服に着替えさせられ、マンションを後にした。
「姉さん、何処に行くの?」
「生活能力皆無のあんたでも
どういう意味だ!?
まるで俺が人間の生活ができないみたいじゃないか!!
失礼過ぎる。
後部座席に座っているエリックなんか姉に同意すると言わんばかりに頷いているし。あんまりだ。二人とも俺を何だと思ってるんだよ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます