第5話 神殿 そして…②
「ここどこ?」
辺りを見渡す謎のケモミミ美少女。
〔異世界の少女よ。あなたは勇者として選ばれました〕
「へ? ぼくのこと?」
〔そうです。勇者よ……あなたはこの者たちを導き、共に成長し世界を救いなさい〕
「ぼくが勇者? そんでぼくが世界を救うの? ふう~ん。それよりコレ食べていいの? ぼくお腹空いちゃった」
謎の美少女は神様のお告げにも臆することなく……床に置かれたツナ缶を見てヨダレを垂らしている。そして、お腹の鳴る音が神殿に響き渡る。
〔フフフ……では勇者よ。この世界のこと頼みましたよ。―――それでは、これからもあなたたちに○の加護があらんことを……〕
そう言い残すと女神像の光が弱まり、やがて光がなくなった。
そして、静寂に包まれる神殿に「ぐう~」と鳴るお腹の音が木霊した。
「とりあえず、それどうぞ……」
「いいの? いただきます!」
スプーンを使って勢い良くツナを口に運ぶケモミミ美少女。
「うっま~! なにこれチョー美味しい」
満面の笑みを浮かべ、ツナ缶をがっつくように食べるケモミミ美少女……なんだこれ? これは……尊い! 尊いぞ。
「なくなっちゃった……」
ツナ缶を食べ終わり、がっくりと肩を落としたケモミミ美少女。
「台所にまだあるけど…食べる?」
「えっ? 食べる食べる!」
途端に花が咲いたように明るくなった少女を連れて、台所に行く。
テーブルに座ってツナ缶を美味しそうに食べ始める少女。
「……食べ終わってからでいいんだけど、あなた名前は? 私は穂香。岩村 穂香、こっちは仙道 正宗」
「ぼくの名前? ルー・ラウリア。ルーって呼んで」
「ルーさんね。なら私のことも穂香って呼んで」
「僕も正宗でいいよ。よろしくルーちゃん」
「ホノカにマサムネだね。うん。覚えた。よろしくなのだ」
微笑むケモミミ美少女改めルーちゃん。尊い……なんて尊いんだ。
「それでルーちゃん。勇者ってなに? ルーちゃんはどこからきたの? それになんで言葉が通じるの?」
「う~ん……ぼくもよくわかんない。気がついたらさっきの場にいたし、確か仲間と共に狩りをしてたはずなんだけど……」
「そう……」
おいこら! この僕っ子ケモミミ少女……本当に大丈夫か? 可愛いのは認めるけど戦えるのか? アニメとかラノベとかだと人間と動物の力を併せ持つキャラだけど……見た目はメッチャ可愛いからね。強いと言われても信じられない。
「でも君たちをいっぱしの戦士にしてあげるよ。それがぼくの使命みたいだし、ぼくがんばるよ。だから、これもっと食べたいな」
「……戦士はともかく。よろしく。穂香、この子になにか食べ物作ってくれよ」
「ええ、ツナ缶ももうないし。冷蔵庫の中にあるもので良ければ」
「うん。それでいいからお願い」
「わかったわ。ルーさん、ちょっと待っててね」
穂香が冷蔵庫の中を確認して料理を作り始めたようだった。
「ルーちゃんて歳はいくつなの?」
「ぼく? ぼくは15だよ。これでも村一番の狩りの名手なんだよ」
「へ~ 15でもう狩りもするの?」
「なに言ってんの? 15ならいっぱしの大人だし、子どもも産めるぞ」
「……そ、そうなんだ……」
これがカルチャーショックってやつか……いや、日本も昔は 12~18くらいで元服したというしそんなもんか。
その後、穂香の作ってくれた野菜炒めを美味しそうに食べ始めたルーちゃん。
突然、こっちの世界に召喚されたのに本人は意外とあっさりしている。
獣人族である彼女は僕たちと考え方が違うのか、それとも彼女の性格なのかわからないけど、かなり楽天家のようだった。
一通り話を聞いた僕たちは、もう遅い時間なのでお風呂に入って寝ることにした。
入浴の習慣があっても慣れない日本のお風呂場ということで、今は穂香と一緒に我が家のお風呂に入っている。
僕の両親は仕事で忙しく、今は海外で暮らしている。
つまり、今家には僕と穂香、ルーちゃんのみ。
そして、美少女が二人でお風呂に入っている。
キャッキャッと楽しそうな声が聞こえてくる。
お風呂場では今、どんなことが起きているのだろうか?
穂香とケモミミちゃん……あのしっぽの付け根はどうなってるんだろうか? 体毛は? おっぱいの大きさは? 僕の興味は尽きることがない。
しばらくしてお風呂から上がった二人がリビングに現れた。
……二人共パジャマ姿だった。
穂香のパジャマ姿なんていつ以来だ? 胸の膨らみが凄いことになっとる。
ルーちゃんの着ているパジャマは穂香の物だろう。
くっ! 二人とも可愛いじゃないか……それに良い匂いがする。
穂香は穂香で火照ってるのか知らんけど胸元をパタパタしとる……チラチラ見える胸の谷間が……いいぞ! もっとやれ!
ルーちゃんもしっぽをぶんぶんと振ってご機嫌のようだった。
そして僕は今、お風呂場にいる。
さっきまでこのお湯に美少女二人が入っていたと思うと凄く興奮する。
思春期真っ最中の高校生の取る行動といえば推して知るべしだろう。
◇
その後、お風呂から上がった僕はリビングで、ルーちゃんは僕の部屋で寝ることになり、穂香は自分の家へと帰っていった。
リビングに敷いた布団で僕は考える。
これからどうすればいいのだろうか?
僕の部屋に異世界の神殿と繋がる扉が出現しました。
そして、異世界からケモミミ美少女のルーちゃんが来ました。――っと、正直に報告していいのだろうか?
そうした場合、彼女はどういう扱いになるのだろうか?
研究者が沢山やってくるのは間違いない。
手荒なまねはしないと思うが、正直心配である。
ここはしばらく彼女のことは秘密にしておくべきか?
幸いなことに家の両親はしばらく帰って来ない。
とりあえず今日はもう遅い、明日改めて話を聞こう。
朝目を覚ますと、そこはリビングの天井だった。
そうだった……僕のベットはルーちゃんが使っていたことを思い出した。
そして、右腕が動かせないことに気がついた。
金縛り? いや違う……これは……まさか耳?
そこには僕の胸元に顔をうずめて眠っている女の子の姿が……。
―――って、なんで僕の布団にルーちゃんがいる?
「ちょっ! ルーちゃん起きて!」
「ふぁあぁぁ……あれ? ご主人様……おはようございますぅ」
「ご、ご主人様? 僕が? 寝ぼけてないで起きてよ。つか、なんでここにいるんだよ! ルーちゃんは二階のベットで寝てたんじゃないの?」
「ん~ ご主人様の匂い好き。だから一緒に寝た」
「意味わかんないよぉ!」
こらっ! 匂いを嗅ぐなっ! そしてスリスリすんな!
なんか柔らかいモノが押し付けられて……それになんですか? この耳は!
僕を殺す気ですか? 触ってもいいですか? 触っちゃいますよ?
……いや駄目だろ。
「正宗オッハヨー! 起きて……る?」
「―――――っ!」
あっ……不味い。
さて、ここで問題です。
リビングにやってきた穂香さん。
布団に潜り込んで僕に抱きついているルーさん。
この状況……この後どうなるのでしょうか?
「朝からなにやってるのよ! あんたたちはぁぁぁぁぁ!」
正解は……穂香にメッチャ怒られるでした。
ルーちゃん共々、朝からお説教をくらいました。
……なんで僕がこんな目に? 僕なんも悪いことしてなくね?
それになんで穂香が怒るの? 仮にだよ……もし間違いが起こったとして、なんで穂香が怒る必要がある?
恋人や親じゃないんだから怒る必要なくね?
「僕のことはほっといてくれ!」
――――なんて言えるわけもなく……怒られました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます