ピーのこと
チョコレートストリート
第1話 インコが来た日
陽が落ちても肌寒いと感じなくなってきたある春の日、大学から帰ると居間に鳥かごがあり、中に黄色いセキセイインコがいた。
小鳥を飼おうなんて話はきいていない。
「このインコどうしたの?」と母に尋ねると「拾った」という。
今日母が街中にできたばかりの公園へ友人と出かけ、木陰のベンチで涼んでいたら右肩をとんとたたかれて、振り向くと肩にインコがいた、らしい。
手乗りがうっかり窓から飛び出してしまったのだろう、インコは人慣れしていてそばを離れない。どうしたものかと何度か空に放ってみたけれど、少し飛んだらくるっと回ってまた肩に舞い戻ってきてしまう。公園は広く、インコがどこから来たのか見当もつかない。
「仕方がないから連れて帰ってきたわ」
「どうやって?」その公園はここから電車で1時間以上かかる。
「ケーキを買って公園で食べて、そのケーキの空箱に入れてきた」
インコが電車の中で時折ぴーぴー鳴くものだから、母の周りにいた人たちは不思議そうに辺りを見回していたそうだ。
鳥かごの中を覗くと、インコは止まり木にちょこんと座り、なんにも考えてなさそうな顔でこっちを見ている。
以前鳥好きのご近所さんからひなをもらい、セキセイインコを育てたことがあるので、うちで小鳥を飼うのは初めてではない。そのときのインコは、たまたまかごから出して遊んでいたときに家人が開いたドアから外に飛び出していってしまいそれっきりだ。
飛んで行ってしまった青いインコ。どこからかやってきた黄色いインコ。
黄色いインコはこうして、今日からうちの子になった。
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