春はつばめ

チョコレートストリート

第1話 春はつばめ

春はつばめ。

近所のスーパーのひさしのいつもの場所に、今年もつばめが戻ってきた。

長いしっぽが巣から飛び出して、ひょいひょいと動いている。

そうなると、近くを通る度に気になって仕方ない。

ある日ついに巣から、団子みたいにみっちりと並ぶ小さいひなの頭が見える。

お母さんが(もしかしたらお父さんかもしれないけど)すいーっと巣に戻ってくる度に、ひなたちは一斉に首をのばしてピーピーと大騒ぎをする。

すいー、ピーピー、すいー、ピーピー、すいー、ピーピー。

ひなたちの鳴き声もこころなしか力強くなっていく。

ごはんをもらっていただけのひなが、自分で飛ぶ練習をはじめる日がやってくる。

少し離れたお母さんの方へ(お父さんかもしれないけど)巣のふちに足をかけて、ぴょいっと飛び出す。

はじめ少し落下しそうに見えて、緩やかに放物線は上昇へ転じる。

ひなはみるみる飛距離を伸ばし、巣にいる時間はどんどん短くなっていく。

もうすぐ夏というころ、ふと気付くともう巣に気配はない。

つばめ行っちゃったね。また来年だねぇ。

ちょっとだけ寂しげにつばめの巣を一緒に見上げる子供。

こんな会話ができるのも、子供がいつか巣立つまで。

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