第92話 かに


 結局は極にしたダンジョンを無くすことになった。

「んじゃこれから二百階層までノンストップでいくから。着いてこれなくても死ぬなよ」

「「「「はい」」」」

「お前は俺が連れていく」

 勇者の首根っこをつかんで走り出す。

「な、な、なんで?」

「リーダーだろ?極めの恐ろしさを味わえや」

「いーやーだー」

 走り回り、ときには勇者を盾にして極ダンジョンを攻略していく。

「も、もう許して」

「やだね」

 自分らがしたことがどんなに危ないかを知れていいだろう。

 なんとか他の仲間もついて来てくれている。ほとんど俺がモンスターをたおしているからだけどな。


 二百階層にたどり着くと体長十五メートルはある八本足のバグベアがいた。

「無理無理無理無理」

「これ倒さないといけないんだよ!お前らがしたことだろうが!」

「すいません!ほんとすいません」

 勇者をおろしてアスカロンを構える。

 突進を交わしたと思ったら左腕に持ってかれて叩きつけられる。

「ガハッ!」

「小太郎さん!」

「ちゃんと見とけよ?」

 自分にヒールを、かけながら距離を詰めていく。二本足で立ったバグベアは巨大で追い詰められる感覚がある。右薙、左薙と腕を振ってくるが、それをよけて胸に深い斬りキズをつくる。

『グアおおぉぉぉぉぉぉぉ』

 と吠えるとまた突進の構え、これに合わせてこちらも構える。

 走ってくるバグベアに一太刀合わせて避けるがやはり腕で捕まえられる。

「グオッ」

 ここで頭にアスカロンをブッ刺して息の根を止める。俺は吹き飛ばされたが。

 バグベアはやっと灰になってドロップ品と、宝箱に変わった。

 ドロップ品と宝箱をアイテムボックスにいれて、転移陣で外に出る。

「お疲れ様でした」

 外に出ると勇者組が揃って頭を下げる。

 俺の鎧もボロボロだけどほかのみんなも似たり寄ったりの格好だ。

「勇者君はどうだった?」

「俺はまったく動けませんでした」

「だろ?力量考えて行動しろよ?」

「はい!」

「もう助けねぇからな」

「は、はい」

 マリアはバツの悪そうな顔をしている。

「マリア!勇者組を連れて来たのはなぜだ?」

「そ、それは」

「私が頼んだんです」

 三原さんがマリアの前に出た。

「大谷君達も頑張ってるし、上を目指す目標になるかなって。でも考えが甘かったです。すいませんでした」

「わかった。今後も対処出来なかったら俺を呼べ。だが、他のやつを呼ぶな!」

「はい」

 ちょっとキツいが死人が出るよりマシだ。結局は帯広ダンジョンも無くなってしまったわけだしな。

「じゃーな」

「お、送っていくよ」

 マリアが言ってくるが、

「転移で帰れる」

「す、すまなかった」

「もういい」

 俺たちは転移で家まで帰る。

「あー疲れた」

「本当におつかれさま」

「俺死ぬかと思ったよ」

「極めがこんなにキツイなんて」

「アンアン」

「だから連れて行きたくなかったんだ。極は本当に生命に関わるからな」

 防具を脱ぎ、ソファーに座る。

「そんなところを一人で攻略してたんだな」

「それは俺がやりたいからだ。今日のはやりたくなかった」

「そうね、あんな大人数でみんなを守れるかわからないものね」

「そうだ」

「アンアン(かには?)」

「ハハッ、またこんどな」

 今日は疲れた、あんな事はもうゴメンだな。ランクアップすれば対処出来なくなるんだから罠なんだよあれは。

 ビールを開けて飲むと喉が痺れる感覚と爽快感が駆け巡る。

「クゥー!っとに今日は最悪だったぜ!」

「でも転移の場所は増えたんですよね?」

 リアが言ってくる。そうだよ!いつでも北海道にいけるじゃん!

「だな!北海道の美味いもん食べ尽くそう!」

「「「おおー!」」」

「アン」

 次は沖縄あたりに行ってみるか?一回行けばいいだけだもんな。

 出来れば日本全国回ってみたいな。

 でも北海道だけでもいけたからよしとするかな。


 いまから北海道の美味いもの食べにいくか!

「北海道行きたい人ー」

「「「はい」」」

「アン」

「んじゃ『転移』」

「まずはカニだぁー!」

 カニの有名店に行く。席は空いてたのですぐに座れた。

「……うまぁ」

「………」

 誰も喋らなくなった。ガンプにはリアが取ってあげてるし。ビールとカニでいう事無し!

「なんで、さっき帰ったんですか?」

「うぇ!?なんでいるの?」

 三原さんが怒ってる。

「あのあとマリアさんが泣いて手がつけられなかったんですから」

「いや、そんだけ俺も怒ってたしな」

「それでも!女の子なんだからもうちょっと言い方を考えてあげてください」

 え?なんで俺が怒られてるの?カニ屋で?

「それは俺が悪かった」

「なら本人に言ってください」

 連れて行かれた先はグデングデンに酔っ払ったマリアの前。

「あれ?小太郎さんがいる?ごべんなざいー、こべんなざいー」

「も、もういいからな!な!」

「ほんとうに?」

「本当に」

「嫌ってない?」

「きらってないから」

「じゃあ好き?」

「はぁ?」

「やっばりきらいなんだー」

 三原さんを見ても知らんぷりだ。グデングデンの相手をしろと。

「あぁ、好きだ。だから泣きやめよ」

「やったぁー!じゃあ私もあの家に住む」

「いやそれとこれとは」

「やっばじー」

「わかったからな!まぁ飲め!」

「はーい!」

 やばいやばい早く帰らないと、

「帰れると思ってます?」

 三原さんも目が座ってる。

「三原さんは未成年?」

「えへへ、ちょっとだけですよ」

「ちょっ!他のみんな助けろ!」

 他のみんなは無視してカニをほじくっている。

「助けて……」

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