第54話 帰還者
聖教国に来た俺は帰した人に聞いた話だと、三原さんと言う聖女は日本に帰るために協力していると言うこと。勇者組は力に溺れてこの国で生きていくと決めていることをきいた。
「三原さんですか?」
夜中に部屋に侵入した不審人物だが、名を呼ばれて声を上げないでいてくれた。
「誰ですか?」
「私は貴方の仲間、十二名を日本に帰した者です」
「日本に帰ったんですか?」
「しー」
「他の人が見つからないわけですね」
「私も日本人で風間小太郎といいます」
「私は三原静音といいます」
「では、信じてもらうために一度日本に行きましょう」
三原さんの手を取り、
『転移』
「あぁ。あぁああ!」
三原さんは泣き崩れてしまった。
だがこれで終わりじゃない。すぐに聖教国に戻り、
「今のが、私の能力です。日本に帰りたい人を集められますか?」
「はい!……でも勇者組は」
「それは俺がなんとかします。三原さんは集められるだけ明日の夜にここで」
「分かりました」
ここで三原さんとは別れる。
次の日には七名の日本に帰るために集まった人を、一人づつ送り届ける。
最後に三原さんを送り届け。次は勇者組だ。
すこし乱暴になるが、勇者組は寝ている間に勝手に日本に帰した。さきに三原さんに渡された地図を頼りに残り八名をさっさと帰した。
「んだ!ここ日本じゃねぇか!」
「なになに!なんで日本に戻って来てんの?」
「うおっ!三原達じゃん」
こいつらは三原さんにお願いしよう。
あとは宝物庫の財宝を全てアイテムボックスに入れて完了だ。
「ルー。すべて終わったよ」
「分かったわ、ライラに連絡するわね」
次の日には全てが終わっていて聖教国と言う名の国は無くなっていた。
聖教国の人間に刃向かう力など無く、ライラの言うことに従って行動している。
「ライラさん」
「コタローか。全て終わったぞ。これからはここは我が統治する」
「はい、それでこれを渡しにやって来ました」
俺は宝物庫の中身を全て出した。
「これは?」
「聖教国が貯めていた資産です」
大量の白金貨と金銀財宝が山になったいる。
「あいつらのやりそうなことだな」
「これを民のために使って下さい」
「ははっ!ルーはいい弟子をもったな!あいわかった、これは民のために使うと約束しよう」
「あ、城の再建にも使って下さいね」
「もちろんだ。城の再建には人がいる。その人には賃金を払わなくてはならぬからな」
ライラさんはここを復興したら他の人に任せるらしい。まぁライラさんの息のかかった人らしいが。
「コタローよ、我の弟子にならぬか?」
「滅相もない、俺はルーの弟子ですので」
「あははは。嘘じゃ。本当にやるとルーが怒りそうだからな」
赤の魔女ライラさんは本気の目をしていた。
さて、聖教国のことはライラさんに任せて俺はようやく帰れる。
転移でルーのところへユフィを迎えに行き、日本に帰る。
「なんだ?だれか死んだのか?」
実家から負の感情が目視出来るほどの濃さで渦巻いている。
「大丈夫か!」
「だーれーじゃー」
「小太郎とユフィだ」
シーンと静まり返った家の中はこんなにも不気味だっただろうか。
「ユフィちゃんじゃー!」
「帰ってきた!」
「もう帰って来んかと思ったぞ!」
「小太郎どけ!ユフィちゃーん」
「待て!」
爺婆ズがお通夜みたいになってたのはユフィがいないからか。
「俺が帰って来たんですが!」
「お前なんてユフィちゃんのおまけじゃ」
「ふざけんなよこの親父」
取っ組み合いの喧嘩になるがどこにこんなちからがあるのか?
「いけ!そこじゃ!」
「腹を狙え!それ、ワンツーじゃ!」
「このバカ爺婆ズがぁーー」
テレビに映ってるのは勇者だった大谷だ。
「だから異世界はあるんですよ」
勇者の称号を得て、日本に返された勇者。
「で?なんであなたは帰されたのですか?」
「それは知らない。俺が強すぎたから?」
「話になりませんね、それならなんとしても帰されないはずです」
そんな不毛なやり取りをテレビでしている。
「三原さんはそのあと大丈夫?」
『はい、おかげさまで無事家まで帰れました』
「みんなお疲れ様って感じだね」
『みなさん本当に感謝していましたよ』
聖女の称号を持つ三原さんは普通に学校に通っているらしい。
勇者組は元々素行が悪いこともあって今はメディアで取り上げられているがそのうちダンジョンにでも行くだろう。
『それでお願いがあるんですが』
「ん?何?」
『私達をダンジョンに連れて行ってもらえませんか?』
三原さんのお願いはダンジョン探索だった。
「これで全員?」
「はい!」
聖女の三原さん。剣闘士の久保田くん。盾士の川地くん。賢者の神崎くん。弓師の池田さん。錬金術師の斎藤さん。拳闘士の矢田くん。の七名。
「これまではあっちの世界でダンジョンに潜ってたんだよね?」
「はい!」
「じゃあこっちの世界じゃ物足りないかも、ちなみに初級?」
「はい、初級ダンジョンの二十階層まで行きました」
頑張ってたんだな。
「じゃあこっちの初級に入ってみようか。たぶん攻略できると思うよ」
学生の冒険者は付き添いが必要になってくる。保護者だな。
「はい、よろしくお願いします」
「おう。んじゃ入ろうか、俺は後ろからついていくからね」
盾士と剣闘士と拳闘士の三人が前衛、聖女、錬金術師、が中衛、後衛に賢者と弓師。
いい感じのパーティーだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます