第44話 博打


“バシュッ”

 ユフィの弓が鳴りモンスターに矢が生える。

「いい感じじゃないか」

「いや、ここ難易度おかしいって」

 アスカロンでキメラを叩き斬る。

「そうか?」

「なんで普通にキメラやらワイバーンがでてくるの!俺の矢がもう尽きてきてるんだけど!」

「んじゃ今日はここら辺でいいか」

「らじゃ!さっさと帰るぞ」

 まだ二十三階層までしか来てないんだけどな。二十階層まで戻って転移陣で外に出る。

「なんなのあれ!上級超えてるだろ」

「まぁ超えてるだろうな」

 特級でもいいくらいだ。

「矢が尽きるなんてありえないからな?結構持ってきてたし」

「コタローダンジョンはこんな感じだって」

 こんどはほかの上級ダンジョンにしよう。


「さて、王都に来たから女将さん達に会っていかないとな」

「おー、コタローの友達か?」

「まあ、お世話になった人達だ」

 ユピーもげんきにしてるといいが。


 宿に到着するなり、また追い出されてる客が喚いていた。

「絶対こうかいさせてやるからな!」

「もう一発くらわせてやろうか!」

「ひいぃぃ!」

 バタバタと逃げて行く男。

 すると女将と目が合った。

「よぉ!久しぶりっす」

「あら、コタローじゃないか!いつ王都にきたんだい?」

「さっきですよ」

「兄ちゃん!」

 ユピーが走り込んで抱きついてくる。

 頭を撫でていると不機嫌そうなユフィが横にいた。

「女たらし」

「これはユピー、俺の妹みたいなもんだ」

「だれ?仲間の人?」

「俺はコタローの彼女だ」


 女将に連れられて中に入る。

 中ではトランプで遊ぶ大人達。なんでも賭けトランプらしい。

「へぇ、コタローに彼女ねぇ。ユピーは負けちまったねぇ」

「一夫多妻だからまだ大丈夫!」

「こらユピー!そんな言葉誰に教わったんだ」

 えらいことを教える輩がいたもんだ。

「レオランおじちゃんだよ」

「あの野郎!」

「それよりどうしたんだい?いきなり来て」

「ん?王都に来たついでに寄ってみただけだ」

 それにしてもユピーは少しみない間に女の子らしくなっておっちゃんは嬉しいぞ。

「あんたがいなくなってからトランプ賭博が流行ってねぇ、それでさっきのやつみたいなのが増えちまった」

「しまったなぁ、流行らせなきゃよかった」

「いまさらだよ。娯楽はすくないからねぇ」


「だー負けた負けた!やってられるかってんだ!」

「代金は置いていけよー!」

 負けた男は代金を置いてさっさと出て行ってしまった。

「あいつがここらへんで勝ち続けたるやつさ」

「おい兄ちゃん!勝負しねぇか?」

「んじゃいっちょやるか」

「そうこなくっちゃな!」

 俺は席に着くと周りの人を遠ざける。

「あとは新しいトランプでしよう」

 新しいトランプをアイテムボックスから取り出すと男の顔が歪む。

「お?なんか仕掛けでもしてたのか?」

「そ、そんなわけないだろ?やったやるよ」


「すいませんでした」

「さっさと払うもん払って失せろ!」

「はいぃ!」

 大金を置いて逃げて行く男達。


「なんだい。なんかしてたのかい?」

「トランプも使い古せばなんのカードかわかるもんだよ?さっきのやつは全部記憶してたんだろうな」

「はぁ、そう言うことかい」

「新しいトランプを置いて行くよ」

 アイテムボックスからトランプを出して行く。

「ここで売ってもいいし、ここでつかってくれてもいい」

「本当にありがとね」

 女将さんは笑顔でトランプをしまって行く。

 今日は泊まっていってもいいかもな。久しぶりにレオラン達にも会いたいし。

「女将、部屋は空いてるか?」

「ダブルでいいのかい?」

 笑顔で聞いてくる女将。

「だめだ。ツインで頼む」

 ダブルでなんてまだ、ち、チューもしてないってのに!

「なんだいまだなのかい。ツインね、空いてるよ」

 ほっと一息つくと何故かユフィとユピーが仲良くなっていた。

「お前ら仲良くなったのか?」

「「ひみつー」」

 けっ、はやくレオラン達帰ってこないかな?


 宿の部屋でまったりしていると外が騒がしくなった。レオラン達が帰ってきたのかと外に出ると、叩き出された男が刃物を持って女将さんと対峙していた。

「俺はもうスッカラカンだ!それもこれもこんなとこで、博打なんかしてる宿が悪い!」

「そりゃ私達のせいじゃないだろう!」

 俺はそっと後ろに周り男を昏倒させる。


「あ、ありがとうよ、さすがにびっくりしたよ」

 女将はなんとか立っているが足が震えてる。

「こいつは憲兵に連れて行くよ」

 抱えて門まで走り憲兵によろしく頼む。

「コタロー!」

 懐かしい声がしてそちらを見ると、

「レオラン」

「どうしたんだ?」

「女将のとこで暴れたやつを突き出してただけだ」

 まだ意識の戻ってない男を指差す。

「あぁ、トランプのやつか。いつも負けてて可哀想に思ってたんだよ」

「こいつらいつもやってたのかよ」

 負け続けてんならやめりゃいいのに。

「お、今日は大物狩ってきたのか?」

「おう!キングボアだ。結構手こずったぜ」

 後ろからメルが顔を出す。

「重いんだから早く行こうよ」

「俺も手伝うよ」

 キングボアを持ち上げると、メルが抜ける。

「あぁー重かった。コタローよろしくね!」

 いつもの調子だ。


「ただいまー!」

「あら、遅かったねってレオラン達も一緒かい!」

「あぁ。偶然会ってな!さぁーて、今日も飲むぞー!ってだれだ?」

 ユフィを見つけてレオラン達に紹介する。

「けっ!彼女が出来たからって見せつけに来たのかよ!」

「僻むんじゃないよ!さぁ食べとくれ」


 女将の料理をたらふく食べた後、レオランと話をする。

「貧民街はどうなった?」

「綺麗なもんさ。いままで膨れてきていた人間達が我先に住んじまった。もう空き家はないんじゃないか」

「そうか、あんなことがあったのにな」

「あぁ、上の考えが透けて見えるぜ」

 貧民街を一掃して新しい土地に変える。本当は王がこれを指示したんじゃないかと思ってしまう。


「なに辛気臭いはなしをしてんだよ!こっちに混ざれ!」

 ガストが女どもの話についていけなかったらしい。

「おう!今日は飲むぞー!」

「「「「おう!」」」」


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