第39話 帝都


 次の街には早めに着いた、と言っても途中で野宿をしたから二日かかったが。

「ここでも商いをしますので二日休みにしてもよろしいですか?」

「こっちは護衛だからいいぞ」

「街では商いするんだね」

「はい。商売しないといけないですし、仕入れもしないと在庫が少なくなって来てますからね」

 商売人も大変だな。


 ギルドに向かい少しドロップ品を買取してもらう。ユフィの弓で散財したからな。

「こりゃたまげた、アイテムボックス持ちか」

「あぁ、そうだがあまり大声で叫ぶなよ」

「悪りぃ悪りぃ」

「それで?いくらになる?」

「これだけあれば二百三十万てところだな」

「それでいい」

 思ったよりも高く売れたな。

 ギルド内で木札を渡して換金する。

 受付のお姉さんがビックリしていたがいつものことだな。


 次は魔法屋に向かい、掘り出し物を探す。

「なんかオススメはあるか?」

「ここにあるのは五行魔法に探知なんかがオススメだね。あとはスクロールでも瞬歩があるよ」

「じゃあ、瞬歩を貰おう」

「八十万ゼルだ。あと剛腕なんてどうだい?」

「瞬歩だけでいい」

「そうかい、ありがとよ」

 ようやく瞬歩が手に入った。 

 ユフィは別に何も買うことはしなかった。


「お前は買わないのか?」

「今で十分満足してるからねぇ」

「まぁ、いまあるのを磨くのもいいことだ」

 ユフィも冒険者をずっと続けるわけにはいかないだろうからな。


 残りの休みの日は別行動。

 俺はルーのとこに来ていた。

「よぉ、久しぶりだな」

「生きてたのかい?」

「ずいぶんな言い草だな」

 俺は椅子に座るとルーがコーヒーを淹れにいく。

「これを私に来たんだ」

「は?これは若返りの霊薬かい?」

「よくわかったな。鑑定してみて驚いたよ」

「こんなレア物どこでてにいれたのさ」

「ダンジョンがレベルアップするところに偶然居合わせてな、そこの宝箱から出た」

 その時のことを詳しく話したらルーも数十年ぶりに聞いた話らしい。

「そりゃ珍しいもんが出て来るわけだ」

「だろ?だからそれはやるよ」

「いいのかい?また三歳に戻らなくても?」

 笑い話にもならない冗談だ。

「もうごめんだね」

「うそうそ、これはありがたく貰っておくよ、ありがと」

「どういたしまして」


「いまはどこにいるんだい?」

「いまは帝都に向かってる最中さ」

 まだまだ時間はかかりそうだがな。

「そうかい、帝都なら大丈夫だろうけど聖教国なんていくんじゃないよ?あそこは魔王軍とドンパチやってるからね」

「あぁ、まだしにたくはないからな」

「それでいい」

「そうだ、あんたの連れもたまには連れてきなよ」

「ん?ユフィをか?あれは礼儀がなってないからな」

「いまさら何言ってんだい?あんたも礼儀なんかないだろうに」

「うっせぇ」

「ケッ!こんな可愛げのない弟子なんか取るんじゃなかったよ」

「じゃあ霊薬を返してもらおうか?」

「何言ってんだい。あんたは最高の弟子だよ」


 ほんと現金な魔女だよ。


「まぁ、今回はそんなとこかな」

「あんたは危なっかしいから気をつけるんだよ?」

「あぁ、まだまだ死ぬわけにはいかねぇからな」

 日本にちゃんと帰るまでは死ねないしな!


「じゃあまたな!」

 俺は街に転移した。

「ぶー!どこいってたんだ?」

「おわっ!ユフィかよ」

「日本に行ってたのか?」

「ちげぇよ、師匠のとこだ。日本に帰るなら時間がかかるだろ」

 不貞腐れた顔のユフィがわかったような顔になる。

「日本に行く時は俺も連れてけよ?」

「善処するよ」

「ぜったいだ!」


 二日はあっという間に過ぎて、俺たちはいま馬車の中だ。

「いやぁ、仕入れも順調に済みましたし、あとは帝都に向かうだけですね」

「次は帝都なのか?」

「そうですよ。もう少ししたら……ほら、城壁が見えてきましたよ」

 遠くから見える城壁は横に長くどこまでも繋がっているかのように見える。

「帝都は大きな城壁が見ものですね。あとは時計台なんかも名所になってます。一回見たら飽きますけどね」

「それは住んでたからじゃないか?俺たちからしたら城壁だけでビックリだよ」

「すげーな!こんなの初めてだ」

 ユフィも興奮してる。俺も日本では絶対見られない光景に興奮している。


「近くで見るとまたでかいなぁ」

 ようやく帝都への門に並ぶが、人が多すぎるのと、三十メートルはあるだろう城壁が迫ってかるようですこし怖くもなる。

 門までは橋がかけられていてその横ではで店が軒を連ねている。

「おっちゃん、それ一つ!」

「あいよ、十ゼルだ」

 買い食いをするユフィは嬉しそうにそれを貰うが、味については難しい表情をしている。

「やっぱ、フェイズさんがハンバーガーを売るのが正解だと思う!」

「いや、これでも安くて美味い方だと思うぞ?失礼なことを言うな」

 ハンバーガーはもっと高くなるだろう。ユフィは絶対に買うだろうが、庶民にはなかなか手が出せないと思う。


 ようやく順番が回ってきてフェイズさんは商人ギルドのカード、俺たちは冒険者カードを提示する。

「よし、通っていいぞ」

 街の中に入ると綺麗な石畳みの道が続いている。大通りにはいろんな店があり、見ているだけで楽しめる。

「では、私の店。と言うより私の父の店に向かいましょう。そこで報酬を渡したいと思うので」 

「了解」

 俺たちはフェイズさんの店、エドワード商店に入っていった。


「坊ちゃん!お帰りなさいませ」

「坊ちゃんは辞めてくれよ。セバス」

 執事のような格好のお爺さんがフェイズを見るなり泣きそうになっていた。

「こちらの方は?」

「こちらは冒険者のコタローさんとユフィさん。護衛を頼んだんだ」

「まあまあ。フェイズ坊ちゃんを無事で連れてきてくれてありがとうございます」

 護衛もつけない流れの商人は、世間知らずなだけのボンボンだった?!

「コタローさん、声に出てましたよ」

 苦笑いのフェイズさんに嗜められ、奥の客室に案内される。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る