第36話 ダンジョンの進化


 暇になったので初級ダンジョンを攻略してみる。まぁ、お遊びだがな。この初級ダンジョンはライーサダンジョンと言う。


 ライーサダンジョン 三十階層

 ライノスという犀もどきの地龍がボスか。

 硬い皮膚に角で突進してくるが、避けて首筋にアスカロンはスッと入っていく。

「やっぱ初級だとこんなものか」

「まぁ俺にまかせりゃこんなもんさ」

「お前は何もやってないだろ」

 ユフィは俺にばかり戦わせて見てるだけだった。

「俺はちゃんと見て勉強してたんだよ」

「どうだかな」

 ドロップ品を集めるとなぜか宝箱が出てきた。

「ん?なんでだ?」

「おー、宝箱なんて出て来るんだ?」

「いや、途中にあるのはあったが、ボスを倒して出て来るなんてはじめてだぞ?」

 罠感知で罠がないことがわかると宝箱を開ける。

「小剣とスクロール?」

“ゴゴゴゴゴ”

 宝箱から持ち出した瞬間、全体に振動が響き渡り新たな階段が出来た。


「これは中級ダンジョンになったってことか?」

「たぶんそうだよ!」

 ユフィと二人で下に降りていくとやはりダンジョンが成長したようだ。

「ここを確認して次の階段を見つけたらギルドに報告に帰るぞ」

「ええ!攻略しないのかよ」

「あとでできるし、中級は難易度があがるから初心者だと危ないだろ」

 

 結果、次の階段も見つけギルドに報告に行く。

「ライーサダンジョンが進化したと言ってきたのはお前らか?」

「あぁ、あんたは?」

「ここのギルマスだ。まずは話を聞こう。着いてきたまえ」

 ギルマスの部屋に通されると、飲み物を出された。

「で?どのようにしてダンジョンが成長したんだ?」

 説明をして宝箱から出たものを見せる。

「これは宝剣にレベルアップのスクロールだな」

「レベルアップ?そんなスクロールもあるのか?」

「あぁ、オークションにかければ金に困らなくなるぞ」

 レベルアップを99で使うとどうなるのか気になるところだな。

「これは返すよ。で?したの階層はどうだった?」

「三十二層の階段を見つけて帰ってきた。早く知らせなければ初心者が犠牲になるからな」

「分かった、すぐにダンジョンは封鎖して調査しよう。出来れば調査をお願いしたいのだが」

 初心者が多い町だから調査をする人間がいないのだろう。

「あと二日だけなら調査できるから、出来るだけやるよ。その間に冒険者を呼んどいてくれよ?」

「ああ、中級ダンジョンでも通用する冒険者を呼ぶことにするよ」


 ライーサダンジョン 三十五階層

 ここでは三十階層でボスだったライノスが普通に闊歩している。

「気を抜くなよ」

「当たり前ぇー」

 ライノスを倒していくとやはり初ダンジョンということもあり、宝箱がたまにある。

「おおー!また会ったね!」

「罠があるからちょっと待て!」

「はぁーい」

 こいつにも感知のスクロールを買ってやるか。

「ほら開いたぞ」

「やっほー、お宝お宝!」

 中に入っていたのはミスリルの短剣にインゴットだった。

「これもらっていいよね?いいよね?」

「あぁ、俺はインゴットでいいよ」

「あぁ、新しい武器だぁ!」

 ユフィはミスリルの短剣に頬擦りしている。


 ライーサダンジョン 四十階層

 ボスは三又のヘビ、三叉だ。名前のままだな。サクッと倒すとやはりドロップ品の後に宝箱が出て来る。これは初討伐だと出て来る仕様なのか?

「まだ出た!俺たち運が良くない?」

「いや、これが初討伐の恩恵みたいだな」

 罠もなく、宝箱を開けると指輪と小手が入っていた。鑑定すると『念話の指輪』と『ミスリルの小手』だった。

 もちろん念話の指輪が俺でミスリルの小手がユフィに渡った。

「もうミスリル装備にしちゃう?しちゃおうかな?」

「派手だからやめとけ」

 まだ小手だからいいがミスリルの全身装備なんか見ていられないだろ。痛すぎる。


 ライーサダンジョン五十階層

 さすがに調査で攻略するのもどうかと思ったが、初討伐の恩恵がある為、やっておくことにする。

「さぁ、飛龍ちゃん!俺の糧になりな!」

 ボスは飛龍といってもワイバーンの亜種、角があり、普通のワイバーンよりは硬そうだ。

『ギャオォォォォォ』

「ガオォォオォォォ」

 そこで張り合うなよ。

 炎を吐き出して来るワイバーンに弓を射るユフィの戦いは接戦だった。なんとか倒したが攻撃力がネックになっているな。

「武器を買い換えた方がいいな」

「これ使いやすかったんだけど力不足はしょうがないか」

 やはり宝箱は出てきて『若返りの霊薬』と『マジックバック』が入っていた。

「俺のはこれ!」

 マジックバックを奪い取ると嬉しそうにまた頬擦りをするユフィ。俺は若返りの霊薬か、ルーに渡そう。マジックバックは時間停止がついていて要領も体育館ほどあるようだ。

 自分の持ち物を俺のアイテムバックからマジックバックに移す。

「ハンバーガーも!クレープも!」

「はいはい、でも食いすぎるなよ?」

「分かってるって!」

 ……絶対分かってないよな。


 五十階層で終わりのようだから、ギルドに戻ってギルマスに報告をする。

「じゃあ、やっぱり中級に格上げだな。よく調べてくれた。これは報酬だ」

「お、結構はいってるな。奮発したのか?」

「ちゃんと見合った対価を支払うもんだろ?」

 意外とここのギルマスはしっかりしているようだ。

「んじゃ俺らは護衛に戻るよ」

「おう、今回はありがとな」

 

 ちゃっかり初回報酬を獲得したのは内緒だ。


「聞きましたよ!ここのダンジョンが中級になったって!コタローさん達が調査してきたんですよね」

「さすが商人、情報が早いですね」

「はい!それにしてもそんなことがあるんですね」

「俺たちもビックリしましたよ」

 ダンジョンが進化するなんて……こんどルーに聞いてみるか。


「あ、それとハンバーガー出来ましたよ!色々試行錯誤しましたが、いい出来です!こちらを食べてみてください」

 フェイズさんがマジックバックから出してきた二つの包み紙を受け取り、食べてみる。

「うん。美味い!」

「これなら売れますね」

「原価が高くなり過ぎないように工夫しましたよ。肉はオーク肉です」

「へぇ、これだけのものが出来れば売れますね」

「俺もこれだったら買うぞ」

 ユフィの口にも合ったらしく買い込んで自分のマジックバックにいれていた。


 

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