第20話 別れと出発


「コタローの攻略を祝って!カンパーイ!」

「「「「「カンパーイ」」」」」

 今日は貸し切りで錆猫の居眠り亭で祝ってくれた。もちろん竜の肉は女将に料理してもらっている。

「やったね!コタローダンジョン」

「だいぶ恥ずかしいけどな」

 メルに茶化される。

「それにしても早かったな」

「いや、半年は過ぎてるし遅いくらいだろ」

「は?王都ダンジョンは上級だが、それ以上がないから上級ってだけで他の国だったら特級くらすだぞ?」

「やっぱりそうなんだな、ほかの上級より出て来るモンスターが強いと思ったわ」

 なんでこの国には特級がないのかわけわからんな。

「んで?地龍は強かったか?」

「まぁまぁだな」

 あれで鱗が外れなかったら負けてただろうか?


「くぅー、言うねぇ」

「悔しかったら攻略してみてよ」

「ハハッ、いずれな」

 レオラン達もそのうちダンジョンに行くだろうな。

「はい、竜肉の唐揚げだよ」

 ユピーが大皿をヨタヨタ待って来る。

「おっと、大丈夫か?」

「へへっ、大丈夫大丈夫!」

 もうしっかり看板娘になっている。これでいつでもここを出ることができる。


「兄ちゃんは次、どんな頃に行くんだ?」

「ん?なんでだ?」

「だって旅人なんだろ?いつか出ていくならそろそろかなって」

 少し寂しそうなユピーだが、気丈に振る舞っている。

「あぁ、つぎはもっと東の方にでも行ってみようかと思ってる」

 今度は帝国にでも行ってみよう。

「そっか。ありがとな、助けてくれて」

「へ?」

「いや。ちゃんとお礼言ってなかったから。兄ちゃんがいなかったら私は死んでたし」

「おう、いつでも助けてやるよ」

「う、うん!」

 

 いつだってこまってたら助けてやるさ。


「それじゃあな!」

「うん、また絶対来てよね!」

 ユピーや女将に挨拶をして宿を出る。

 レオラン達には昨日別れをいったし、ギルドに寄ってから王都を離れるか。


 ………

 ……

 …

 

「んー、堅パンってまっずいなぁ」

 黒くて硬いパンをなんとか齧りながら夜番をしている。俺は王都でギルドから勧められた小隊の護衛をしながら帝国を目指している。いまは途中での野営の為、俺ともう一人が夜番のため外にいる。

「あっちはあっちで何も食ってねぇから俺だけ美味いもん食うわけにはいかないじゃんか」

 火を絶やさぬように薪を焚べ、パチパチと火が鳴る中を警戒している。


「敵襲ー!」

「はっ、寝てたか!ん?ゴブリンかよ」

 俺は走って挟み撃ちしてきた俺の方のゴブリンを斬り倒し、反対側が苦戦してるのを助けに行く。

「ただのゴブリンだろ!さっさと倒せよ!」

 ゴブリンを一蹴すると同じ夜番のやつに言う。

「なっ!お前に言われなくても俺だってちゃんと戦ってただろうが!」

「はぁ、まぁいいや」

「くっ!」

 流石にゴブリン相手に負けそうになるなんて警備するにしてもどうかと思うぜ。


 その後、ようやく交代してもらい眠りにつく。が、これまた外でゴブリンが出たらしくうるさくて眠りが浅かった。

「なんで怪我してんだ?」

 朝起きると昨夜交代した夜番の冒険者が怪我をしていた。

「まずい依頼に当たったみたいだな」

 俺以外に冒険者ギルドから派遣されたのは、黄金の爪って大層な名前の四人パーティーだけ、そのうち二人が怪我してるってどう言うことだよ。

「おいお前、回復魔法は使えるか?」

「使えませーん」

「……馬鹿にしてんのか?」

「してませーん」

「ちっ!もういい!」

 だれがあんな礼儀のなってない小僧どものお守りなんかやるかよ。


「コタロー殿、昨日はお手柄だったようだな」

 小隊の依頼主さんが話をして来た。ポケットさんと言う商人なのに体格のいい人だ。

「ゴブリン程度ならいくらきても平気ですよ」

「ハハッ!それは頼もしいことだ」

 ポケットさんはそれだけ言うと列に戻っていく。一応戦えるらしく一人でも大丈夫そうなのだが、護衛をギルドに依頼したらしい。


 それにしても黄金の爪はもうちょっとしっかりしてほしいな。


 帝国までは普通に行くと二週間の長旅だ。その途中途中で村や町に寄って商売をするらしく、一月はかかる予定になっている。

「次はノサルディと言う町で一泊しますのでそこまで皆さんよろしくお願いします」

「「「「「はい」」」」」


 森の中を進むと木漏れ日が気持ち良く、今日みたいな日は散歩気分で歩けるな。

「コタロー殿?」

「はい?なんでしょうか?」

「いや、にこにこしていらしたから何かあるのかなぁと」

「いや、あまりにも景色がよくてこうして警護をしていても楽しくなって来まして。すいません。気合を入れて警護しますね」

「いやいや、他の人はガチガチですので一人くらい自然体の方がいざという時動けるので今のままでよろしくお願いします」


 そうなんだよな。あまりにも黄金の爪が緊張してるからこっちにもプレッシャーがかかって来るんだよ。

「て、敵襲ぅ!」

「ん?またゴブリンか、しかもはぐれだな」

 一匹のゴブリンに四人で襲いかかる。

「コタローさんは行かないのですか?」

「俺が離れるとポケットさんを守る人がいなくなりますし、はぐれのゴブリンなんか相手に大人数はいらんでしょ?」

「ハハッ!それは言えてますね」

 ポケットさんと笑いながら道を歩いていると、やっと走って戻って来た黄金の爪に文句を言われる。


「敵襲って聞こえただろ!何で来ないんだよ!」

「はぐれ一匹に何分かかってんだ?しかも護衛対象を置いていくな!」

「は、くっ!」

 こいつは本当にガキくさいな。


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