第19話 コタローダンジョン


 王都ダンジョン 八十二階層


「ハァ!とりゃぁ!」

 ケツァルクと言う大型の翼竜を倒してドロップ品を回収する。

「はぁ、やっぱりここは異常に強いな」

 ここまで来るのに三ヶ月も掛かっている。

 ここまでには貧民街も新しい建物が広がってきていて、自分が決めた目標には今一歩届きそうもない。

「あーぁ、貧民街の開発に負けてしまうかな。まぁしょうがないか、俺がまだ弱いのが問題だ」

 悔しいがこのダンジョンは一筋縄では攻略出来ない。

「攻略してから王都を後にするか」

 次の魔物がやって来ている。アスカロンを抜き自然と身体に力が入る。

「まだまだ強くなる!」

 地を駆けモンスターに立ち向かっていく。



「ただいまぁー」

「おかえり兄ちゃん!」

「おかえり!肉はあるかい?」

「今日はいい肉はないねぇ」

「まぁそんな時もあるさ!さぁ、シャワーでも浴びて来な」

 錆猫の居眠り亭はいつも通りだ。


「よぉ!」

「あいよ!」

 レオラン達もここの常連になっている。

「またダンジョンか?飽きないねー」

「うっせ、俺は攻略したいんだ」

「えー、王都のダンジョンってまだ攻略した人いないじゃん!」

 メルはもう飲んでるようで顔が赤い。

「だからいいんじゃないか!俺の名前のダンジョンにしてやる」

「コタローダンジョン?ダッセェ」

 ガストが大笑いしている。

「いけてるだろうが!てかレオラン達はまだ魔の森か?」

「そうだぞ?今日の肉は俺らが狩ってきたファングベアだ」

 肉を持ち上げ嬉しそうにしている。

「ならさっさとシャワー浴びてくるわ」

「おう、まってるぞ」

 レオラン達とはいつもこんな感じで馬鹿を言い合える仲間と言ってもいいだろ。


「カンパーイ」

 レオラン達と飯を食いながらトランプを楽しむ。

「さぁ!どっちだ!」

「うーむ、こっちと見せかけてこっちだ!」

「ざんねーん」

 子供かよ。メルとガストの一騎打ちだ。

「なぁ?ほかにも面白い物ないのか?」

「ん?飽きたか?」

 レオランが言ってくる。そう言えば色々買ったな。大人数でできる物か。

「これでいいだろ?」

「ん?これなんだ!なぁ」

「ジェンガってやつだな。積み上げた積み木を倒さないように抜いていく、抜いたやつはまた上に積み上げる。で、倒した奴の負け」

 俺は積み上げていってそっと一つ抜いてみて、上に載せる。

「つぎは俺だ!」

 レオラン、メル、ガスト、ウィッグ、ときてまた俺に戻って来る。

「まだまだ」

 俺の番が終わり、レオランの番。

「おい、これどこが抜けるんだよ!」

「おいおいリーダーブルってんじゃねーぞ!」

「手が震えてるよ?」

「うっせぇ!ここを、こうして……」

 震える指でそーっと抜こうとするが、

「「「ああぁぁぁぁ!」」」

「負けたぁーー!」

「「「「あはははは」」」」

 またこれも流行りそうだな。


「コタローは不思議だな」

「ん?まぁな」

「否定しないんだな」

「こんだけ初めてのもんを出してんだから否定しても意味ないだろ?」

 レオランは笑っている。

「まぁその通りだな。おかげで楽しませてもらってるよ」

「だろ?ならそれでいいんだ」


「ダンジョン攻略したらどうするんだ?」

「さぁ?決めてないなぁ」

「なら俺らと」

「それはないな。俺は一人でいっぱいいっぱいだ」

 レオランは口惜しそうにしているが、俺は本当に自分だけで精一杯だ。人の事まで背負えるような人間じゃない。

「仲間はいいぞ?いつまでも一人ではいられない」

「そうかもしれないな。でもいまは一人がいいな」

「ハハッ!ならまた今度勧誘してやるよ!」

「諦めとけよ」

「諦めは悪い方なんでな!」



 王都ダンジョン 百階層

「ようやくここまで来たか」

 だいぶかかったな。でもようやく一区切りだ。

「さて、どんなモンスターだ?」

 扉を開けて中に入るとそこには緑に輝く鱗を持つドラゴンが鎮座していた。

『ほう、ようやく我を楽しませる人間が現れたか』

「楽しませるだけじゃないと思うけどな」

『よう言うた。では死合うとしよう』

 見た目は羽がないから地龍ってことか?


 グランドドラゴン……大地の力を秘めた地龍。その鱗はドラゴンの中でも最も硬いと言われている。

「げっ!チートじゃねぇかよ!」

『チートとは知らぬが、安心して死ねばいいぞ』

 ドラゴンが前脚で撫でるように襲いかかる。

「クッ!!おもっ!」

『ガッハッハ!これを受けきるとはなかなかどうして楽しませてくれる』


 ただ撫でただけだろ?こんなやつに勝てる気がしないが、どこかに活路があるはず。

『では少し本気でこれならどうだ』

 ドラゴンは後ろを振り向くと、遅れて尻尾が凄い勢いで迫って来る。

「うおぉぉぉおぉぉぉ!」


『ん?いない?』

 振り返るといない俺をキョロキョロ探しているが、俺は尻尾に掴まり背中に登っていた。

「ハアァアアァ!!」

 アスカロンで突き刺してみるが弾かれる。そのまま何度も突き刺してようやく一枚鱗が剥がれた。

『ほぅ。我の鱗を剥がしたか』

「かってぇぞ!」

 剥がれた鱗部分からアスカロンを突き入れる。

『ウガァアァァ!』

「鱗が硬いだけか!なら剥がしまくってやる『サイクロン』」

“バリバリバリ”

 鱗が剥がれたところから捲れていく。

『ウガァアァ、この身の程知らずがぁー』

 暴れまくる地龍にへばり付いてアスカロンを突き立てる。

「誰が離すかよ!『雷付与エンチャント』」

『グガガガガガ』

 剣に雷付与をして身体の中に電撃を通す。

 地龍はプスプスと煙をあげ、痙攣している。

「まだまだァァァ!」

『グガガガガガガガガガ』

 地龍が灰になって消えていくとドロップ品を残していった。

 ドロップ…地龍のネックレス、地龍の鱗、竜星玉、魔生石、地龍の肉。


「口程でもなかったな。背中に張り付いてただけだし」

 ゴゴゴッと音がして宝箱が出て来た。

「お、攻略報酬か?」

 中を開けると魔法玉が二個と槍が一本入っていた。

 次空間の魔法玉……時空間魔法を覚える。

 転移の魔法玉……転移魔法を覚える。

 地槍アラドヴァル……大地の力を秘めた槍。


 魔法玉は残念だったが、槍は役に立ちそうだな。

「よし、これ以上はなさそうだから攻略完了!」

 俺は転移陣で外に出る。

 外のゲートが光り、黒かったゲートは金色に輝いた。ダンジョン制覇の証だ。

「すっげぇ!あなたが攻略したんですか?名前は?」

「コタローだ、攻略したよ」

「これからここはコタローダンジョンだ」

 ダンジョンの外は大盛り上がりだ。やっと攻略出来た。半年以上ここに攻略のために通ったぞ。

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