第8話 四人の魔女


 アレクダンジョン 十一層

「ブルーミノタウロスが出て来たか、こりゃ厄介だぞ」

 聖剣アスカロンを手に進んでいく。

『サイクロン』

 ミノタウロスの群れに遭遇するが、魔法で消し飛ばす。倒すよりドロップを拾うのに時間がかかるな。


 アレクダンジョン 二十階層


 クリスタルディアー……角がクリスタルになっていて、光魔法を反射させ使ってくる。

「なぁー!上手いこと狙ってきやがる」

『ウゴォォォォ』

 光線を反射させて使って来るが狙いは結局俺だから対処し易い。アスカロンの刃で反射させて角を斬ってやるとただのシカだ。


 ドロップはクリスタルディアーの角、鹿肉、魔生石。

「デッケェ角だな、高く売れそうだ」


 アイテムボックスに入れ、次の階層に降りようとしたその時、

「うおっ!」

 階段下から赤黒い槍が飛んできた。バックステップで避けると槍は天井に突き刺さる。


『ちっ!避けやがった』

 階段を登って来たのは角を生やし、浅黒い肌の大男。黒い鎧まで身に付けている。

「なんなんだ?」

『お前は邪魔だ。死ね』

 三又の槍が大男の手元に戻り、その槍を回転させながら突いてくる。

「だからなんなんだよ!」

 アスカロンで打ち合いながら聞くがダンマリだ。


「聞けよ!『サイクロン』」

『ウォォオォォ!』

 風魔法で吹き飛ばすがすぐに体制を整えて向かって来る。

「ほんとウゼェ『バーンクエイク』」

『ガッ!ガアァァアァァァ』

 地割れに足を取られ炎に巻き込まれる大男。すかさずアスカロンで追い打ちをかける。

『グッ!』

「テメェの負けだ!何者だ?」

 左胸にアスカロンが突き刺さっている。


『ア……カノマジョ……』

「赤の魔女?……死んだか」

 大男は灰になって消えていく。

「槍は消えないんだな」

 アイテムボックスに入れて保管する。


 その後は三十階層まで確認したが異変は無くなってしまったようだ。

 俺は三十階層の転移陣で外に出て、転移で領主の館に向かう。



「して、それがその槍か……」

「そうです。そいつがダンジョンブレイクを画策していたと思われます」


 バレンシア子爵は槍を手に取り眺めると、騎士に渡す。

「シャインも世話になったようだな。これが褒美だ、取っておけ」

 奥から袋に入ったものを渡される。


「これからも何かあれば来るといい」

「それでは失礼します」

 俺は子爵家の館を出る。


 背後から声が掛かる。

「あの、ありがとう」

「シャインか、あまり無茶をするなよ」

「うん、サザンも無事回復したわ」

「そうか、それじゃあな」

 俺は宿に戻ると疲れ果てて寝てしまう。


 次の日はゆっくり昼まで寝ていた。

「はぁ……転移」

「きゃあ!な、なによ!急に現れて!」

 ルーはまた下着姿で椅子に座っていた。

 ビックリしすぎて椅子から転げ落ちそうになっていた。

「悪りぃな、で、さっそくなんだが赤の魔女ってなんだ?」

「は?なんでコタローが赤の魔女を知ってるのよ?」


 バレンシアダンジョンのことを話すと、

「あぁ、あいつのやりそうなことね」

「だからなんなんだよ、そいつは?」


「このルナディアには四人の魔女がいるの、黒の魔女は時を好み、白の魔女は死を好み、青の魔女は知を好み、赤の魔女は血を好む。

赤の魔女は人々が戦い血が流れるのを好むのよ」

 

 ルーはタバコに火をつける、そして少し嫌な顔をして口を開く。


「赤の魔女は北の大地にいるの。その地は魔族の地、赤の魔女は魔族を従えている」

「魔王ってことか?」

「そう呼ばれることもあるわね」

「俺にはどうにも出来ないな」

「そうね」

 はぁ、聞くんじゃなかった。


「んで?まだなんかやりそうなのか?」

「ん?そこまでは知らないわ。友達じゃないもの」

「そっか」

 それ以上は聞かずにルーの家を後にする。


 俺はバレンシアの街の宿屋に戻って来た。

 次はどうしようか。この街で上級ダンジョンの攻略でもしようか。

“ドンドンドン”

「嫌な予感がする」

 扉を開けるとやっぱり、

「コタロー!一緒にダンジョンに行きましょう」

「お断り“ガッ”お、お断りします」

 足を入れて来た。

「ま、まずは話を聞いてよ」

「めんどくさいので嫌です」

 身体を捩じ込んでくる。

「話だけでもー」

 結局、俺が折れた。


「で、私も強くなりたいのよ」

「で、もなにもシャインが強くなる必要はないでしょ」

 お嬢様なんだから周りに強い人がいればいいじゃないか。

「今回の事でサザンもやられたわ。私が…私自身がもっと強くあったなら」

「それは懸命な判断です。であれば俺なんかより自分に合ったダンジョン、中級辺りでレベル上げをすれば」

 なにも上級ダンジョンで強くなる必要はないのだ。


「わ、私はコタローに強くして欲しいの、お金なら払うわ」

「はぁ、俺もまだ人に教えられるほど強くないですよ」

「それでもいいの。私をダンジョンに連れて行って」

 甲子園じゃないんだから。てか折れそうもないなぁ。

「分かりましたよ。でもサザンさん?いいんですね?」

「よろしくお願いします。それとダンジョンでは助けていただきありがとうございました」

 どこからともなく現れると一礼してシャインの後ろに陣取る。


「やった!やったわ!サザン」

「良かったですね、お嬢様」

 二人は手を取り合ってはしゃいでいる。

「だが行くのは明日から、中級ダンジョンに行ってもらう」

「は、はい」

 シャインは急いで返事をする。

「サザンさんもついて来ますよね?」

「勿論でございます」

 にこやかに笑うサザンさん。


 帰って行った二人を見送ると、どっと疲れが押し寄せて来る。アイテムボックスからシュークリームをとりだす。

「疲れた時は甘いものに限るな」

 シュークリームを食べながら今後の展開を考えながらふっと息を吐いてステータスを見る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 コタロー 十五歳

 レベル62

 力 A+

 体 B+

 速 A-

 魔 A+

 運 B-


 黒の魔女の弟子

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ようやく全てがB以上になったな。

 

 



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